トイレ動作における脱臼肢位の注意点(後方アプローチ後)
大腿骨近位部骨折に対する後方アプローチでの人工骨頭置換術を受けた方は、術後しばらくの間、特定の肢位(姿勢)を避ける必要があります。特に股関節を深く曲げたり、内側にひねる動作は脱臼のリスクが高まるため注意が必要です。
❌ 和式トイレの使用は避けましょう
和式トイレを使用する際は、どうしても深くしゃがみ込む姿勢になります。
これは股関節に屈曲・内転・内旋の力がかかるため、後方脱臼のリスクが非常に高い姿勢です。
そのため、術後の一定期間は、和式トイレの使用は避けることが望ましいです。
〇 洋式トイレを活用しよう
できるだけ洋式トイレの使用をおすすめします。さらに、便座が低い場合はポータブルトイレや便座上げ台を使うことで、より安全に排泄動作が行えます。
便座の高さの目安と補高便座の活用について
洋式トイレを使用する際でも、便座が低すぎると股関節の屈曲角度が深くなり、脱臼のリスクが高まります。
そのため、術後は便座の高さを調整することが非常に重要です。
便座の高さの目安
- 目安の高さ:
→ 椅子に深く腰掛けたときに、股関節と膝の角度が90度以上になる高さ(膝よりやや高め)が安全です。
- 具体的な数値:
→ 座面高40〜45cm以上を推奨(身長や脚の長さによって個人差あり
補高便座(補助器具)の活用例
- 市販の補高便座(5cm〜10cmの高さ)を洋式便器に設置することで、安全な座位動作が可能になります。
- 補高便座には肘掛け付きタイプや取り外し可能なものもあり、立ち座りの補助や転倒予防にも役立ちます。
ワンポイントアドバイス
- 補高便座を使うと「足が浮く」場合もあるため、足台を併用することで安定性が向上します。
- 便座に座る際も、片足を引きすぎないよう両足を揃えて浅く座る姿勢が理想的です。
まとめ
後方アプローチ術後は、日常生活の中での小さな姿勢の違いが脱臼につながることもあります。特に排泄という頻度の高い動作においては、正しい姿勢と環境整備(洋式トイレの活用)が非常に重要です。
ぜひ、本資料を患者さんやご家族への説明・指導の際に活用してください。