【無料イラスト付き】大腿骨近位部骨折〈後方アプローチ〉術後の脱臼肢位|靴/靴下の脱着について②

このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。

 

目次

はじめに|“靴と靴下の脱ぎ履き”にも脱臼リスクがあることをご存じですか?

大腿骨近位部骨折に対する後方アプローチ手術(人工骨頭置換術など)を受けた患者さんは、術後において特定の姿勢を避けることが求められます。なかでも、意外と見落とされがちなのが「靴や靴下の脱ぎ履き」の動作です。

毎日の生活において何気なく行っていた動作であっても、術後は股関節にかかる負荷や姿勢に十分配慮する必要があります。

本記事では、脱臼を引き起こしやすい靴や動作の例に加えて、補助具を使わずに“足を組む”姿勢で安全に靴や靴下を脱着する方法を、無料イラスト付きプリントとともにご紹介します。リハビリ現場や退院指導で活用できる具体的な指導例をお伝えします。

※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。

内容と目的|股関節脱臼を引き起こしやすい姿勢とその回避方法を視覚化

なぜ「靴や靴下の脱ぎ履き」が危険なのか?

後方アプローチでは、術中に股関節後方の筋や靭帯が切離されるため、術後は股関節の安定性が一時的に低下します。

特に以下の3つの動作が重なることで、後方脱臼のリスクが高まります。

  • 股関節の深い屈曲(90度以上)
  • 内旋(脚を内側にひねる動き)
  • 内転(脚を内側に寄せる動き)

これらは靴や靴下の脱ぎ履き時に無意識に行われやすく、特に以下の姿勢に注意が必要です

  • 前かがみで足先に手を伸ばす
  • 膝を抱えるように足を引き寄せる
  • 片足立ちで靴を履く・脱ぐ

これらの動作により股関節が不安定な肢位に入り、脱臼の直接的な引き金になる可能性があります。

運動方法と活用方法|“足を組む”姿勢で安全に靴や靴下を脱着する

脱臼リスクが高まる靴と危険な動作

脱臼しやすい靴の特徴

  • 紐靴・ストラップ式の靴(屈む動作が必須)
  • 履き口が狭く足を押し込む必要がある靴
  • ハイカットブーツや足首を固定するタイプの靴

避けたい動作の例

  • 床に座って深く前屈しながら靴下を履く
  • 片足で立ったまま靴を脱ぎ履きする
  • 椅子に座って膝を高く持ち上げながら脱着する

これらはすべて、術後の股関節に対して負担の大きい危険姿勢となります。

足を組んで行う“補助具を使わない”安全な方法

補助具がない環境や外出先など、限られた条件でも安全に脱ぎ履きできる方法として、「足を組む」動作があります。

安全に足を組んで脱着する方法

  1. 背もたれ・肘掛けのある安定した椅子に深く腰掛ける
  2. 靴や靴下を扱いたい側の足を、反対側の膝の上に軽く乗せる
  3. 背筋を伸ばし、極力前屈せずに手を伸ばして脱着する

この方法では、股関節を深く屈曲させずに足先に手を届かせることができ、回旋や内転も最小限に抑えられます

注意点と安全への配慮|安定した環境づくりとご家族への指導が重要

「足を組む方法」は手軽に実践できる一方で、姿勢の崩れや無理な力がかかった場合には危険が伴うこともあります。

安全に実践するための注意点

  • 足を組む際は無理に引き寄せたり、強くひねらないこと
  • 座面が高すぎず低すぎない椅子(高さ40〜45cm)を使用
  • 体幹が不安定な方には介助者の見守りや軽い支えが有効

ご家族や介助者へのアドバイス

  • 動作前に靴や靴下を手の届く位置に準備しておく
  • 滑りにくい床環境を整える
  • 必要に応じて、一緒に動作を練習し習慣化を目指す

退院後の生活においては、患者ご本人の意識だけでなく、周囲の支援体制が大きく影響します。
安全な動作の習慣化には、家族や介助者の理解とサポートが欠かせません

まとめ|小さな工夫で脱臼予防と生活の質向上へ

術後のリハビリと聞くと歩行訓練や筋力トレーニングを思い浮かべがちですが、実際には日常動作の中にこそ大きなリスクが潜んでいます。特に靴や靴下の脱着は、毎日繰り返される動作でありながら、術後の脱臼リスクを高める要因となることが少なくありません

  • 道具なしでも実践できる“足を組む方法”で安全に動作
  • 環境整備や姿勢の工夫で股関節への負担を軽減
  • 家族や介助者とともに安全な習慣を身につける

リハハウスでは、この記事で紹介した内容をもとに、無料でダウンロード可能なイラスト付きプリントを提供しています。患者指導、退院前の生活指導、ご家族への説明資料としてもそのまま活用可能です。日常のちょっとした動作の見直しが、脱臼予防と生活の安心につながります。ぜひ、臨床や家庭でご活用ください。

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