大腿骨近位部骨折・後方アプローチ後の床での安全な座り方とは?
大腿骨近位部骨折の手術後、とくに後方アプローチで人工骨頭置換術や人工股関節全置換術(THA)を受けた方にとって、脱臼リスクのある動作には十分な注意が必要です。
術後早期のリハビリでは、立ち座りや歩行の指導が中心となりますが、床での座り方に関しても明確な指導が求められます。
本記事では、脱臼しやすい座り方(三角座り)と脱臼リスクを軽減できる安全な座り方(長座位)について、具体的な注意点と指導ポイントをお伝えします。
なぜ「床での座り方」が重要なのか?
後方アプローチでは、股関節後方の筋群や関節包を切開するため、術後は股関節の屈曲・内転・内旋の組み合わせ動作で脱臼するリスクが高まります。
その中でも、日常生活でつい無意識に行ってしまう「床での三角座り(体育座り)」は、脱臼肢位に該当するため、極めて注意が必要です。
【NG】脱臼しやすい床での座り方:「三角座り」
三角座りとは、床に座り、両膝を立てて腕を抱え込む姿勢を指します。
見た目は安定して楽そうに見えますが、以下の点から非常に危険です。
- 股関節が深く屈曲される
- 膝を閉じることで内転位になる
- 足の角度によっては内旋位になる可能性もある
これら3つが重なると、脱臼リスクが一気に高まります。特に術後3ヶ月以内は、脱臼を起こしやすい時期であり、三角座りは絶対に避けるよう患者や家族へ繰り返し伝える必要があります。
【安全】脱臼リスクを避ける床での座り方:「長座位」
床での座りが避けられない生活環境の方には、長座位(足をまっすぐ前に伸ばす姿勢)が推奨されます。長座位は以下の理由で安全性が高いとされます。
- 股関節が90度未満の軽度屈曲位に保たれる
- 内転・内旋の動きが入りにくい
- 両手で身体を支えることでバランスも保ちやすい
ただし、床からの立ち上がり時に膝を立てすぎたり、体幹をひねる動作は内旋を伴いやすいため、動作全体の流れを丁寧に指導することが重要です。
ご家族・介助者へのアドバイス
在宅生活を支えるご家族にも、以下の点を共有しておくと安心です。
- 三角座りをしていないか見守る
- 必要に応じてクッションマットや手すりなど環境整備を行う
- 椅子での生活を中心にシフトすることも検討
まとめ
術後の脱臼は、回復過程に大きな影響を与える重大な合併症です。
しかし、正しい座り方を理解し、実践することで多くのリスクは防げます。
リハビリの場面だけでなく、家庭での生活指導にも「床での座り方」は欠かせません。
リハハウスでは、引き続き視覚資料や動画などの無料教材も提供しておりますので、ぜひご活用ください。