【無料イラスト付き】大腿骨近位部骨折〈後方アプローチ〉術後の脱臼肢位|床へ落ちた物の拾い方

このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。

 

目次

はじめに|床の物を拾う“日常動作”が脱臼リスクになる?

大腿骨近位部骨折に対する人工骨頭置換術や人工股関節全置換術(THA)などの手術において、後方アプローチを選択された患者さんは、術後しばらくの間、脱臼を誘発する特定の動作に細心の注意が必要です。

とくに注意したいのが、「床に落ちた物を拾う動作」です。これは日常的で自然な動作でありながら、無意識に脱臼肢位に入りやすいリスクの高い行動でもあります。

本記事では、脱臼を招きやすい拾い方と、後方アプローチ術後に推奨される安全な拾い方を、無料ダウンロード可能なイラスト付きプリントとともに解説します。患者指導や家族への説明、退院前教育などにぜひご活用ください。

※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。

内容と目的|なぜ床の物を拾う動作に注意が必要なのか

後方アプローチ術後に避けるべき肢位とは?

後方アプローチでは、術中に股関節の後方組織(関節包・外旋筋群など)を切開するため、術後の安定性が一時的に低下します。

このため、以下の3つの動作が同時に加わる姿勢は後方脱臼を誘発しやすい危険肢位となります。

  • 深い股関節屈曲(90度以上)
  • 内旋(脚を内側にねじる動き)
  • 内転(脚を内側に寄せる動き)

床にある物を拾う際、自然とこれらの動作が組み合わさる場面が多く、患者本人も気づかないうちに脱臼リスクにさらされてしまうことがあるのです。

運動方法と活用方法|安全な拾い方の具体的方法と工夫

NG:術側の股関節を曲げて拾おうとする動作

術後の患者が床の物を拾う際、以下のような動作は特に避けるべきです。

  • 手術した足(患側)を前に出し、深くしゃがみ込む
  • 腰を大きく前屈させ、手を床に伸ばす
  • 両足をクロスさせるようにして座り込む

これらの動作では、股関節が深く屈曲され、かつ足の位置によって内旋・内転が加わりやすく、後方脱臼の典型的な危険肢位に入ってしまいます。

OK:健側を使った片膝立ちでの拾い方

推奨される拾い方は、手術していない足(健側)を主に使った片膝立ちの姿勢です。この方法は、患側の股関節屈曲を最小限に抑えつつ、バランスも取りやすい安全な動作です。

具体的な方法

  1. 健側の膝を前に出して床につける、または膝を曲げる
     
  2. 手術した足(患側)は後方に伸ばした状態で床につける
     
  3. 両手で体を支えながら、床にある物にゆっくりと手を伸ばす
      
  4. 近くに家具や手すりがあれば、安定性を高めるために活用する

このようにすると、脱臼肢位を回避しながら安全に床の物を拾うことが可能です。

注意点と安全への配慮|患者と家族が協力する脱臼予防のポイント

「無意識にやってしまう」リスクに注意

多くの患者さんは、術後しばらく経つと「もう大丈夫だろう」と思い込み、無意識に危険な動作をとってしまうことがあります。特に高齢の方では、膝をつく動作や片膝立ちが不慣れで、つい手術した側の股関節を曲げた動作をしてしまいがちです。そのため、正しい拾い方の反復練習や視覚資料による動作理解が極めて重要です。

ご家族・介助者へのアドバイス

ご自宅での再発予防には、家族や介助者の理解と声かけが大きな力となります。以下のような支援が効果的です。

  • 物を拾おうとする際には一声かけて、動作の安全を確認する
  • よく落とす物(リモコン、スマートフォンなど)はあらかじめ取りやすい位置に配置する
  • リーチャー(ピックアップツール)などの福祉用具を用意し、屈まなくても拾えるようにする
  • ベッド周囲やリビングに手すりや支えになる家具を設置して、動作の安定性を確保する

患者本人の安全意識だけでなく、周囲の環境調整と人的支援が一体となって脱臼予防につながるのです。

まとめ|「拾う」動作にも戦略を。脱臼を防ぎ、安心な生活を支える工夫

後方アプローチ術後は、些細な日常動作が脱臼のリスクを高める可能性があります。特に床の物を拾う動作は頻度が高く、注意を怠りがちな動作です。

  • 患側の足を曲げる拾い方は避ける
  • 健側を使った片膝立ちが基本の安全動作
  • 視覚的な指導(イラスト・動画)と反復練習が理解を深める
  • 家族や介助者との連携と環境整備が再発予防の鍵

リハハウスでは、この記事の内容を基にした無料イラスト付きプリントを配布しています。患者指導、訪問リハ、家族向け教育資料など、さまざまな場面でご活用ください。

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