このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。
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はじめに
視空間認知は、日常生活のあらゆる動作に関わる重要な高次脳機能の一つです。空間の奥行きや方向、立体構造の把握が難しくなると、以下のような生活上の困難が生じることがあります。
- 物の配置を正しく捉えられない
- 立体物の向きを誤認する
- 衣服の前後・上下を間違える
- 地図や図形の理解が難しくなる
脳血管障害や認知症、外傷性脳損傷などさまざまな背景によって視空間認知の低下が生じることがあり、リハビリテーションでは「正しく見て捉える力」を段階的に鍛えていくことが重要です。
そこで今回リハハウスでは、立方体の積み重なり図形を用いた空間把握課題プリント(無料ダウンロード)その③ をご用意しました。左側に見本となる立方体構造が描かれ、右側にはそれと似た図形が3つ並んでいます。対象者はその中から「見本と同じ立体構造の図形」を選びます。
視覚的注意・形態認知・立体構造の把握など、複数の認知能力を同時に刺激できる、臨床でも扱いやすい課題です。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|立体図形の照合を通して空間把握力を鍛える
本プリントでは、左側に「立方体が積み重なった見本図形」が提示され、右側には「似た構造の立方体3種類」が描かれています。対象者は、右側の3つを見比べながら 見本と全く同じ構造の立体 を選びます。
立体を視覚的に認識し、奥行きや積層の構造を理解し、相違点を照合する必要があるため、空間認知能力を効率的に鍛えることができます。
◆ このプリントが目指す主な目的
1. 立体構造の把握力の向上
2Dで描かれた立体から奥行きを読み取る力を養います。
積み方の違い、向きの差を比較しながら判断するため、空間的イメージの再構成を促します。
2. 視覚的注意・探索能力の強化
類似図形が並んでいるため、細部に注意しながら比較する必要があります。
「どこが同じでどこが違うか」を探す過程は視覚探索の訓練として非常に効果的です。
3. 分析的思考(遂行機能)の刺激
複数の候補を比較し、論理的に絞り込むプロセスが遂行機能の活性化につながります。
4. 左右空間への視線移動促進
見本(左)→ 選択肢(右)へ視線を往復させる構造のため、視線の可動域が広がり、
視線固定の癖が強い方の改善にも役立ちます。
5. 在宅でも実施しやすいシンプル構造
複雑な計算や描画は不要であり、高齢者や認知症の方でも取り組みやすい内容です。
運動方法と活用方法|正しい選択に至るプロセスを重視
■ 基本的な実施手順
- プリントを正面に配置する
姿勢が偏ると空間把握力の誤りにつながるため、正面にまっすぐ配置します。
- 見本の図形を丁寧に観察する
立方体の「段数」「向き」「奥行き」「重なり」を確認します。
- 右側の候補を1つずつ比較する
ポイントを押さえて照合すると選びやすくなります。
例:
– 最上段の立方体は同じ位置か?
– 手前と奥の関係性は同じか?
– 立体の高さ(積み数)は一致しているか?
- 最も一致している図形を選ぶ
線で丸をつける・番号を記入するなど、対象者が選びやすい方法で記録します。
- 解答後に確認・フィードバック
「何を根拠に選んだか」を聞くと、空間把握プロセスの理解度がわかります。
■ 臨床現場での応用方法
● 作業療法(OT)
- 視空間認知、形態認知の評価・訓練として活用
- 課題遂行中の視線の動き、探索の偏りを観察できる
- 誤答のパターン分析で視空間障害の特徴把握が可能
● 理学療法(PT)
- 姿勢制御と認知課題の併用として座位・立位練習に活用
- 視線移動の方向偏りや頭部の向きを観察できる
● 言語聴覚療法(ST)
- 説明理解、空間的表現(上・下・奥・手前)を用いた言語訓練に応用
- 認知症の方のマッチング課題としても有効
■ 在宅での自主トレーニングの進め方
家庭でも以下の工夫で取り組みやすくなります。
- 声かけの例
「どこが似ていると思う?」
「上の段、同じ位置にあるかな?」
「奥行きをよく見てみよう」
- 疲労時は中断
集中が落ちると誤りが増えるため、短時間での実施が推奨されます。
注意点と安全への配慮|指導・自主練習時に気をつけるポイント
- 左側の見落としに注意
半側空間無視がある場合、見本を見ないまま候補を選んでしまうことがあります。
軽い声かけで視線誘導を行うと、正しく比較できるようになります。
- 視力・照明環境の調整
細かい線を含むため、照明が暗いと誤認しやすくなります。
- 疲労や集中力低下への配慮
5分〜10分程度の短時間を目安に実施します。
- 否定的な指摘は避ける
誤答した場合も、「どこが違うか一緒に見てみよう」と肯定的に誘導します。
- ペンの使用は必須ではない
回答は指差しでも可能です。ペン保持が困難な方でも参加しやすい課題です。
まとめ|立体の“正しい見え方”を取り戻すための実用的教材
今回の【無料ダウンロード】空間把握リハビリプリントは
- 立方体構造を比較する視空間認知トレーニング
- 見本と類似図形を照合することで空間把握力を強化
- 視線移動・注意・形態認知を包括的に刺激
- 臨床でも在宅でも使いやすいシンプル構成
という特徴を持つ、汎用性の高い教材です。
継続的に取り組むことで、空間把握力の向上、日常生活での物体認識の安定、視覚的注意の改善が期待できます。ぜひ臨床現場や自主トレーニングでご活用ください。

