このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。
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はじめに
記憶課題は、単に物を覚えるだけのトレーニングではなく、エピソード記憶・意味記憶・ワーキングメモリ(作業記憶)といった複数の認知プロセスを同時に活性化させる効果的なリハビリ手法です。特に、高次脳機能障害の方や、日常生活で「物の名前が出てこない」「ちょっとした情報をすぐ忘れる」といった困難を抱えている方にとって、視覚刺激を用いた記憶課題は重要な訓練となります。
今回紹介するリハハウスの【無料ダウンロード】プリントは、文房具のイラストを4つ提示し、それらを記憶したあとに文字で思い出して書く課題 その② です。提示されるイラストは、
- ノート
- 付箋
- 筆箱
- マジックペン
という、誰にとっても馴染みの深い文房具です。
視覚的に覚え、目隠し後に「何が描いてあったか」を文字で想起する構造は、短期記憶・意味記憶・視覚認知を総合的に刺激するため、臨床現場でも在宅でも活用しやすい内容となっています。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|視覚刺激を使って記憶の保持と想起を促す課題
■ 課題の概要
プリントの上部には、4種類の文房具(ノート・付箋・筆箱・マジックペン)がイラストで並んでいます。対象者は、これら4つを30〜60秒程度じっくり観察し、覚えるところから課題が始まります。
その後、イラスト部分を紙で隠す、または裏返すなどして視覚情報を遮断します。記憶を頼りに「何のイラストが描かれていたか」を文字で書き出していく構造です。
イラストを使用した記憶課題は、抽象的な単語だけを覚える場合と比べて視覚的手がかりが豊富であり、視覚認知→意味処理→記憶保持→再生という一連の流れをやさしく訓練できます。
■ リハビリ目的
- 短期記憶(即時記憶)の強化
短時間で複数の情報を記憶し、その後再生する訓練は、短期記憶の向上に効果的です。
- 意味記憶へのアクセス向上
文房具は馴染みのあるカテゴリーのため、意味記憶(semantic memory)が活性化しやすく、想起しやすい構造になっています。
- 視覚認知能力の向上
イラストの形状・特徴を捉えることで、構成的な視覚処理が訓練されます。
- ワーキングメモリの促通
記憶した情報を一時保持し、順番に思い出して書き出すプロセスは、作業記憶(working memory)に対する有効な刺激となります。
- 言語表出・語彙想起の訓練
イラストの名称を思い出して文字にする過程は、語想起(word retrieval)を促す言語的トレーニングとしても機能します。
運動方法と活用方法|臨床でも在宅でも使いやすい構成
■ 基本的な実施手順
- 姿勢と環境を整える
机上にプリントを置き、イラスト全体が見えるように正中で位置を調整します。
- 観察フェーズ(記憶提示)
「30〜60秒ほど見て、イラストを覚えてみましょう」と声をかけます。
指差しを使いながら特徴を確認しても構いません。
- 隠蔽フェーズ
イラスト部分に紙を置いて見えなくします。
この「視覚情報を遮断する操作」が記憶の再生を促します。
- 想起フェーズ(記入作業)
覚えている文房具を文字で書いてもらいます。
順不同で構いません。
「思い出しやすいものから書いてください」と促すと心理的負担が軽減されます。
- 答え合わせとフィードバック
イラスト部分を再度見せて一致しているか確かめます。
全問正解でなくても、覚えられた項目をしっかり評価します。
■ 臨床現場での活用
- 作業療法(OT)
視覚認知・記憶・注意機能の評価および訓練として利用できます。
イラストの特徴を口頭で説明してもらうことにより、観察力の評価にもつながります。
- 言語聴覚療法(ST)
想起課題として非常に有効です。
言語表出困難な方には、口頭ではなく指差し・選択肢方式に変更する調整も可能です。
- 注意・記憶リハビリとの組み合わせ
計算課題や書字課題と組み合わせた多面的アプローチも有効です。
「覚える→隠す→書く」というステップは遂行機能の訓練にも役立ちます。
■ 在宅での自主トレーニング
簡単に取り組めるため、在宅リハビリにも向いています。
家族のサポート例:
- 「どれがあったかな?」
- 「ゆっくりでいいよ」
- 「他にも思い出せる?」
また、難易度調整も簡単で、
初級:2つだけ覚える
中級:4つ(今回の課題)
上級:6つのイラストに増やす/似た形のものを混ぜる
注意点と安全への配慮|実施時に気をつけたいポイント
- 長時間の負荷を避ける
記憶課題は負荷が高く、疲労が集中力低下や動作性の低下を招きます。
1回5〜10分程度を上限として取り組みましょう。
- 「思い出せない」ことによるストレスに配慮
焦らせない声かけが大切です。
「全部覚えなくても大丈夫」という姿勢で進める方が効果的です。
- 視覚情報の負担を軽減
照明を適切にし、イラストが見えやすい環境で行います。
- 筆記困難な場合は方法を変更
– 口頭で答える- 指差し方式にする
- スタンプを使用する
- 不正確な記憶を否定しない
誤った回答があっても、必ず肯定的なフィードバックを行いましょう。
失敗体験はモチベーション低下につながります。
まとめ|身近なモノを使った効果的な記憶リハビリプリント
今回の【無料ダウンロード】記憶リハビリプリントは、身近な文房具のイラストを覚え、その後文字で思い出すというシンプルで効果の高い記憶課題です。
- 視覚認知
- 意味記憶
- ワーキングメモリ
- 想起能力
- 言語表出
など、多くの認知機能をまとめて刺激できる構成になっています。
臨床現場でも在宅でも使用しやすく、記憶トレーニングの入り口として非常に適した内容です。継続的に取り組むことで、記憶の保持・想起の精度向上が期待できます。
ぜひ、日々のリハビリや自主トレーニングにご活用ください。

