機能維持や回復、日常生活動作の改善において、自主トレーニングは非常に重要な役割を持っています。
また、渡すタイミングによって、対象者の機能や日常生活動作の自立度などに影響することがあります。
みなさんは自主トレのパンフレットをどのタイミングで渡していますか?
退院する前に渡している、ある程度の治療やリハビリが進んでから渡している、自分の休み前に渡している、深く考えたこともなかった、など様々な意見があると思います。
私は以前まで、自分の休み前(特に連休)に自主トレを作成して、渡していましたが、大きな間違いでした。
提供するタイミングを少し変えるだけで、運動の継続力や身体能力の維持・改善、早期退院などに結び付くことが多くなりました。
この記事では、どのタイミングで自主トレを提供すれば、対象者にとって有益になるのかをお伝えしたいと思います。

どのタイミングでお渡しすれば良いのか、一緒に見ていきましょう!
結論
『自主トレの内容や注意点を理解し、運動できる方は、
早期から、自主トレ導入が望ましい。』です。
理由 その①
早期から提供することで運動習慣が付きやすい
リハビリや自主トレには即効性はなく、1回の介入だけでは元に戻りません。
粘り強く繰り返し、続けることで結果がついてきます。
運動を続けること、すなわち習慣化することは、私たちでも難しく、対象者にとってはもっと難題です。
行動科学における「3の法則」をご存じでしょうか。
・3日間続けば継続力がついてくる
・3週間続けば習慣になってくる
・3ヵ月間続けば結果が出てくる
という法則があります。
3週間以上、運動を継続しないと習慣化されにくいということです。
日頃から運動習慣がない方に退院前や介入終了前にパンフレットを渡しても定着しにくいのは明白ですよね。
運動意欲が非常に高い方は別問題ですが、、、、
介入終了後、いきなり1人で自主トレを継続していくことは難しいため、
入院中や訪問での介入中に早期から自主トレと同様の運動取り入れ、対象者と一緒に行うことで
習慣化されやすくなり、介入終了後も継続してくれる可能性が高くなります。
また、運動の習慣化が身に付くことで、2次的な合併症の予防にも繋がるかもしれません。
理由 その②
リハ以外の時間を有効活用することで運動効果を最大限活かせる
運動や嚥下の専門家でもある理学療法士や言語聴覚士などと関われる時間や
レクリエーションなどの集団での運動時間は1日24時間の内、ほんの一部しかありません。
例えば、急性期や維持期であれば、1日20分~40分、回復期であれば少なくて1時間~2時間程度しか
専門家と関わることができないことが多いと思います。
1日の内、ほんの一部しかないリハビリ+αの自主トレを行うことで、より運動効果の維持や増大を見込める可能性があります。
対象者だけでなく医療者側のメリットもあります。(それ以外の運動がリハビリ中にできるという点です)
要するに、リハビリ以外の時間に自主トレを【する・しない】で大きく機能レベルやADLが変わってきます。
体力面や疼痛、他の合併症、安静などの理由で、リハビリ以外の時間での運動ができない方については、
無理に自主トレを提供するする必要はありません。
自主的に必要な運動ができる方は・・・
その他の時間も有効活用し、自主トレを取り入れることで、
リハビリだけの介入よりも、機能改善や維持が可能となり、ADLの改善にも繋がってくると考えられます。
しかし、注意しなければならない事があります。
それは、リスク管理です。自主トレをすることは大事ですが、十分なリスク管理が行われた上で行うべきです。
安全かつ効果的に自主トレを進めるためには・・・
対象者のリスクを評価し、全身状態の安定が確保できていることを多職種で確認した上で開始や継続することが重要です。
自主トレーニング表を作成する前に必ず、チェックしなければならないことがあります。
以下のコラムでも紹介していますので、是非確認してみてください。


理由 その➂
早期退院や社会復帰、経済的な負担の軽減になる可能性がある
早期の自主トレ導入は、以下のような実利的メリットも報告されています
- ICU-AW(集中治療後症候群)の予防や在院日数の短縮
- 早期退院と自立支援の促進
- 医療費や介護費の軽減
自主トレを早期に導入することで、身体機能の回復が促され、リハビリ全体の効率も向上します。
これは単に筋力やバランス能力の改善だけでなく、「自分にもできる」という自己効力感の向上にもつながり、対象者のリハビリ参加意欲を高める効果が期待できます。
さらに近年では、ICU後の筋力低下(ICU-AW)や、長期入院に伴うフレイル・せん妄・認知機能の低下などが課題とされており、リハビリ時間外の運動習慣の確立が重要視されています。
実際に、早期からリハビリを開始した患者では、ICU在院期間の短縮やADL(活動的日常生活動作)の改善が認められたとの報告もあります。
まとめ
自主トレの提供タイミングは、「退院前」ではなく、「できるだけ早期」が基本です。
対象者と一緒に、内容を確認しながら取り入れることで、効果的な習慣化・継続支援につながります。
無理に導入する必要はありませんが、適切な対象者には、チームでリスク管理を行ったうえで、早期からの導入を強くおすすめします。
以下のリンクから自主トレーニング素材を無料でダウンロードできます。
ぜひご活用ください!