三角筋のストレッチ

このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。

目次

はじめに|三角筋ストレッチがもたらす臨床的な意義

三角筋は、肩関節を取り巻く主要な筋群のひとつであり、前部・中部・後部の3つの領域に分かれ、それぞれが肩関節の屈曲、外転、伸展、水平外転・内転など多方向の運動に関与しています。特に肩関節の安定性保持や日常生活動作(ADL)においても不可欠な筋であることから、三角筋の柔軟性を維持・向上させることは、肩甲上腕リズムの正常化肩関節拘縮の予防に大きく寄与します。

今回ご紹介する「三角筋のストレッチ」は、肩関節の関節可動域(ROM)を拡大し、肩甲骨と上腕骨の協調性を高めることを目的とした自主トレーニング素材です。整形外科的疾患だけでなく、脳血管障害や加齢に伴う機能低下など、幅広い対象に活用できる汎用性の高い内容となっています。

※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。

内容と目的|三角筋に対する柔軟性アプローチの臨床的背景

内容概要

この素材では、主に以下の3点に焦点をあてています。

  • 三角筋(特に後部線維)を中心とした筋柔軟性の改善
  • 肩関節の水平内転方向における関節可動域の拡大
  • 肩甲骨帯を含む上肢帯全体の運動連鎖の促進

主な目的

  1. 関節可動域の拡大
    肩関節の水平内転動作は、衣服の着脱や整容動作、対側へのリーチ動作において必須です。本ストレッチを継続的に行うことで、これら動作の円滑性を改善できます。

  2. 三角筋の柔軟性改善
    拘縮や筋緊張の亢進によって短縮しやすい三角筋後部の伸張性を高め、疼痛の予防や姿勢アライメントの改善にもつながります。

  3. 肩甲骨の可動性向上
    三角筋の柔軟性が向上することで、肩甲骨の挙上・内転・外転などの動きもスムーズになります。これは特に高齢者や片麻痺患者にとって、重要な臨床的意義を持ちます。

運動方法と活用方法|臨床・在宅どちらでも使いやすい設計

実施方法

  1. 開始姿勢
     椅子に座位、または立位で姿勢を正し、骨盤を安定させます。

  2. ストレッチ動作
    • 一側の上肢を胸の前で内転させます(肩関節水平内転位)。
    • 反対側の手で、ストレッチ対象となる上肢の肘を持ち、体幹方向に軽く引き寄せます。
    • 肩甲帯の緊張を感じる程度で止め、痛みの出ない範囲で15〜30秒間保持します。

  3. 繰り返し
    • 左右交互に1〜3セット実施を目安に行います。
    • 呼吸は止めず、自然なテンポで行うことが望まれます。

活用シーン

  • 整形外科術後の可動域制限に対する初期介入
  • 慢性肩痛(肩関節周囲炎や腱板損傷)後のセルフケア
  • 脳卒中後片麻痺者の麻痺側肩関節の柔軟性保持
  • 通所・訪問リハビリにおける自主トレ支援

本素材は説明図付きで視覚的に理解しやすく、指導者不在の在宅環境でも安心して取り組める素材となっています。

注意点と安全への配慮|誤用を防ぎ、安全に効果を引き出すために

呼吸を止めない

動作中に呼吸を止めると、血圧の上昇や筋緊張の助長を招くリスクがあります。必ず自然な呼吸を保ちながらストレッチを行うよう指導してください。

疼痛に配慮した可動域設定

無理なストレッチによる痛みの誘発は、かえって筋緊張の亢進や防御反応を招きます。「気持ちよい伸び感」の範囲内で行うことが重要です。

ゆっくりした動作を意識

反動や素早い引き寄せ動作は、肩関節や肩甲帯に不要なストレスを加える原因となります。コントロールされたゆったりとしたリズムで実施するよう促してください。

誤った体幹代償に注意

肩関節の可動域を確保するために、体幹の回旋や側屈などが無意識に生じることがあります。体幹を正中に保ち、肩関節のみを動かす意識を持たせることが、正しいフォームの習得につながります。

まとめ|三角筋の柔軟性が肩の機能と日常動作に与える影響

三角筋のストレッチは、肩関節の機能回復や可動域の維持・向上を図るうえで、極めて重要な要素のひとつです。日常生活で頻繁に使用される肩関節の機能を支える三角筋を適切にケアすることで、動作のスムーズさ、疼痛予防、そして姿勢保持の安定性が得られます。

この素材は、自主トレ指導に即活用できる実用的な素材となっており、整形外科領域だけでなく神経疾患、老年期の肩機能低下予防にも効果的です。対象者の状態や能力に応じた調整を行いながら、ぜひ日常のリハビリ指導にご活用ください。

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