「FNにて入院」とは?発熱性好中球減少症の治療・入院期間・リハビリ対応を解説

カルテで見かける「FNにて入院」という記載。

FNとは、Febrile Neutropeniaの略で、日本語では「発熱性好中球減少症」と呼ばれます。

好中球が減少した時期に発熱した状態で、短時間で重症化する可能性があります。そのため、速やかな検査と治療が必要です。

この記事では、FNとはどのような状態なのか、入院後に行われる治療や入院期間、リハビリ専門職が確認したいポイントについて解説します。

目次

先にポイント

  • FNは「好中球減少と発熱」がみられる状態
  • 抗がん薬による骨髄抑制が主な原因
  • 治療の中心は抗菌薬
  • 入院期間は数日から1~2週間以上と個人差が大きい
  • リハビリは全身状態の安定を確認してから低負荷で再開する

FN(発熱性好中球減少症)とは

好中球は白血球の一種で、細菌や真菌などから身体を守る役割があります。

抗がん薬などの影響によって好中球が大きく減少すると、普段であれば問題になりにくい微生物でも、重い感染症を引き起こすことがあります。

FNの主な基準として、以下が挙げられます。

  • 好中球数が500/μL未満
  • または、48時間以内に500/μL未満まで低下すると予測される
  • 腋窩温37.5℃以上、または口腔内温38℃以上の発熱がある

ただし、FNは数値だけで判断するものではありません。

基準を完全に満たしていなくても、患者さんの病状や好中球数の推移によっては、FNに準じた対応が行われます。

リハビリ専門職も、白血球数だけでなく、好中球数(ANC)とその推移を確認することが大切です。

なぜFNは緊急性が高いのか

好中球が少ない状態では、身体が感染に対して十分に反応できません。

感染が急速に広がり、敗血症やショックへ進行する可能性があります。

また、好中球が減少しているため、感染があっても発赤、腫れ、膿などの炎症所見が目立たない場合があります。

一見すると局所症状が少なくても、身体の中では感染が進行している可能性があるため注意が必要です。

感染した場所や原因菌を特定できないことも多く、検査結果がそろうまで治療を待つことはできません。

そのため、FNは内科的な緊急状態として扱われます。

FNの主な原因

FNの原因として最も多いのは、抗がん薬による骨髄抑制です。

抗がん薬はがん細胞だけでなく、骨髄で血液をつくる細胞にも影響を与えることがあります。

その結果、白血球や好中球が減少し、感染しやすい状態になります。

FNと関連する主な要因は、以下のとおりです。

  • 細胞障害性抗がん薬
  • 白血病や悪性リンパ腫などの血液疾患
  • がんの骨髄への浸潤
  • 骨髄を含む範囲への放射線治療
  • 造血幹細胞移植に伴う前処置

好中球が最も低くなる時期は、使用する薬剤や治療日程によって異なります。

抗がん薬の投与から一定期間が経過した後に好中球が低下することもあるため、治療日からの経過も確認します。

入院後に行われる検査と治療

FNが疑われる場合は、感染源や重症度を確認するための検査が行われます。

主な検査

  • 血液検査
  • 血液培養
  • 尿検査・尿培養
  • 胸部X線検査
  • CT検査
  • 口腔内の確認
  • 皮膚や創部の確認
  • カテーテル刺入部の確認
  • バイタルサインや呼吸状態の確認

咳、息苦しさ、口内炎、下痢、腹痛、排尿時痛、皮膚の小さな傷なども、感染源を探す手掛かりになります。

症状が軽く見えても、好中球が減少している時期には慎重な確認が必要です。

治療の中心は抗菌薬

FNでは、原因菌が判明する前から、広い範囲の細菌に効果が期待できる抗菌薬を開始します。

入院が必要な患者さんには、点滴による抗菌薬が選択されることが一般的です。

その後、培養検査の結果や全身状態、感染が疑われる部位などに応じて、抗菌薬の種類が調整されます。

状態によっては、以下の治療も検討されます。

  • 輸液
  • 酸素投与
  • G-CSF製剤
  • 抗真菌薬
  • 感染源に対する治療
  • 全身状態を維持するための支持療法

G-CSF製剤とは?

G-CSF製剤は、好中球の回復を促す薬です。

ただし、FNの患者さん全員に使用されるわけではありません。

重症化する可能性、好中球減少が続く見込み、感染症の状態、患者さんの基礎疾患などを踏まえて、医師が使用を判断します。

FNの入院期間はどれくらい?

FNの入院期間に、決まった日数はありません。

数日で退院できる場合もあれば、1~2週間以上の入院が必要になる場合もあります。

入院期間は、次のような要素によって変わります。

  • 熱が下がっているか
  • 好中球数が回復しているか
  • 肺炎や菌血症などを合併していないか
  • 抗菌薬の効果がみられているか
  • 血圧や呼吸状態が安定しているか
  • 食事や内服が可能か
  • 外来で安全に経過を確認できるか
  • 原疾患に対する治療をどう進めるか

退院は、「解熱したから」という理由だけでは決まりません。

感染症と全身状態が安定し、外来で安全に経過を確認できるかどうかを含めて判断されます。

好中球数の回復が遅れている場合や、肺炎、菌血症などを合併している場合は、入院期間が長くなる可能性があります。

リハビリ専門職はどう対応する?

FNと診断されたからといって、すべての患者さんが長期間の完全安静になるわけではありません。

一方で、発熱直後や全身状態が不安定な時期に、通常と同じ運動療法を続けることも適切ではありません。

リハビリ専門職は、病状と検査値を確認しながら、実施の可否と負荷量を判断する必要があります。

発熱直後は全身管理を優先する

FNと分かった場合は、通常どおりの運動療法をそのまま進めず、まず全身状態を確認します。

確認したい項目は、以下のとおりです。

  • 体温
  • 血圧
  • 脈拍
  • 呼吸数
  • SpO2
  • 意識状態
  • 好中球数
  • 血小板数
  • ヘモグロビン値
  • 抗菌薬の投与状況
  • 輸液や酸素投与の状況
  • 医師から指示された安静度
  • 離床やリハビリ実施の可否

好中球数だけでなく、血小板数やヘモグロビン値も確認します。

血小板数が少ない場合は出血のリスクが高くなり、ヘモグロビン値が低い場合は息切れや疲労が生じやすくなります。

検査値だけで一律に実施内容を決めるのではなく、患者さんの症状や治療内容と合わせて判断することが重要です。

リハビリより全身管理を優先する状態

以下のような変化がみられる場合は、リハビリを開始または継続せず、医師や看護師へ報告します。

  • 悪寒や戦慄
  • 血圧低下
  • 著しい頻脈
  • 強い呼吸苦
  • SpO2の低下
  • 意識状態の変化
  • 急激な倦怠感の増加
  • 胸痛
  • 顔面蒼白
  • 冷汗
  • 新たな症状の出現

FNでは、状態が短時間で変化する可能性があります。

リハビリ開始前に安定していても、実施中に体調が変化することがあるため、こまめな観察が必要です。

安定後は低負荷から再開する

好中球が低いからといって、一律に完全安静にするわけではありません。

解熱傾向で呼吸・循環状態が安定し、主治医の許可が得られた場合は、病室内で短時間からリハビリを再開します。

実施内容の例として、以下が挙げられます。

  • ベッド上での関節運動
  • ベッド上での軽い運動
  • 端座位練習
  • 立位練習
  • 車いすへの移乗
  • 病室内の短距離歩行
  • トイレや更衣などのADL練習
  • 休息方法の指導
  • 省エネルギー動作の指導

再開時は、一度に多くの運動を行わず、患者さんの反応を確認しながら段階的に進めます。

発熱や強い倦怠感が残っている時期は、高負荷の筋力トレーニングや長時間の運動を避けます。

歩行距離や実施時間を先に決めるのではなく、バイタルサイン、自覚症状、疲労の回復状況を見ながら調整します。

リハビリ中に確認したいこと

リハビリ中は、以下の変化を確認します。

  • 脈拍が急激に増加していないか
  • 血圧が大きく低下していないか
  • 息苦しさが強くなっていないか
  • SpO2が低下していないか
  • めまいやふらつきがないか
  • 強い疲労感が出ていないか
  • 顔色や反応に変化がないか
  • 離床後に疲労が長く残っていないか

実施中だけでなく、リハビリ終了後に元の状態へ戻るまでの経過も確認します。

回復に時間がかかる場合は、次回の運動量を減らす必要があります。

感染対策を徹底する

FNでは、患者さんを外部からの感染から守るための対策が必要です。

リハビリ専門職は、以下を徹底します。

  • 入退室時の手指衛生
  • 使用する物品の清拭・消毒
  • 必要に応じて病室内でリハビリを実施
  • 病棟の指示に沿ったマスクや防護具の使用
  • 多人数が使用するリハビリ機器を避ける
  • 体調不良のスタッフは対応しない
  • カテーテルや創部へ不必要に触れない

FNの患者さん全員に、無菌室や完全な隔離が必要とは限りません。

病室外への移動範囲や感染対策は、好中球数だけで決めず、患者さんの病状と施設の方針に従います。

患者さんへの説明で伝えたいこと

患者さんの中には、「好中球が少ないから何もできない」と不安になる方もいます。

リハビリ専門職は、禁止事項だけでなく、安全にできる活動を具体的に伝えることが大切です。

患者さんへの説明では、以下の点を医療チームで共有します。

  • 指定された体温以上になった場合は医療機関へ連絡する
  • 解熱薬の使用方法を事前に確認する
  • 手洗いを行う
  • 口腔内を清潔に保つ
  • 皮膚を清潔に保つ
  • 傷や皮膚トラブルに注意する
  • 便秘や下痢による粘膜の損傷に注意する
  • 食事制限を自己判断で行わない
  • 体調が悪いときは無理に運動しない

患者さん本人が体調の変化に気づき、早めに医療者へ伝えられるように支援することも大切です。

リハビリ専門職が覚えておきたいポイント

FNに関わる際は、次の点を押さえておきましょう。

  • FNは、好中球が減少した時期に発熱した状態
  • 感染徴候が目立たなくても重症化する可能性がある
  • 原因菌が判明する前から抗菌薬治療が開始される
  • 白血球数だけでなく、好中球数とその推移を確認する
  • 発熱直後は運動より全身管理を優先する
  • 全身状態が安定すれば、低負荷から段階的に再開する
  • 血小板数やヘモグロビン値も確認する
  • 感染対策と物品管理を徹底する
  • 実施中だけでなく、終了後の回復まで評価する
  • 判断に迷う場合は医師や看護師へ確認する

まとめ

FNとは、好中球が減少した時期に発熱した「発熱性好中球減少症」のことです。

主に抗がん薬による骨髄抑制によって起こり、感染が急速に悪化する可能性があるため、速やかな検査と抗菌薬治療が必要です。

入院期間は数日で済む場合もあれば、1~2週間以上かかる場合もあります。好中球の回復、感染症の有無、治療への反応、全身状態などによって異なります。

リハビリでは、発熱直後や全身状態が不安定な時期は全身管理を優先します。

解熱傾向となり、呼吸・循環状態が安定して主治医の許可が得られたら、ベッド上運動、端座位、車いす移乗、病室内歩行などを低負荷から段階的に再開します。

FNだから何もできないと考えるのではなく、安全に実施できる活動を見極めることが重要です。

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の患者さんに対する診断や治療方針を示すものではありません。実際の治療やリハビリテーションは、患者さんごとの病状、検査値、医師の指示、院内基準、医療チームの判断を優先してください。

参考資料

日本臨床腫瘍学会
「発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン(改訂第3版)案」
https://www.jsmo.or.jp/news/jsmo/doc/20231109.pdf

国立がん研究センター がん情報サービス
「感染しやすい・白血球減少」
https://ganjoho.jp/public/support/condition/FN/index.html

亀田総合病院 感染症内科
「発熱性好中球減少症」
https://www.kameda.com/pr/infectious_disease/post_87.html

日本造血・免疫細胞療法学会
「リハビリテーション」
https://www.jstct.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=51

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