本プリントは、図形の展開図と立体図形の対応関係を判断することで、空間認知能力をトレーニングするリハビリ用課題です。
展開図を頭の中で立体化し、それがどの図形に対応するかを見極めて線で結ぶという視空間的な課題構成となっており、視覚認知・構成能力・問題解決力の向上を目的としています。
高次脳機能障害や注意障害、失認・失行に関連する認知機能のリハビリテーションに加え、高齢者の認知症予防や学習支援ツールとしても幅広く活用可能です。
■ プリントの基本構成と課題内容
このプリントは、以下のようなシンプルで直感的な構成となっています。
レイアウト
- 左側に【展開図】が4つ縦に並んでいます
- 右側に【完成した立体図形】が4つ並んでいます
- 対象者は、「どの展開図が、どの立体図形になるか」を考えながら、対応するペアを線で結ぶという形式です
視覚的にもわかりやすく、大人から子どもまで取り組めるようなシンプルなデザインが特徴です。
■ このプリントで鍛えられる認知機能
この課題では、以下のような空間認知・視覚的構成機能に働きかけることができます。
◎ 空間認知力の向上
展開図から立体をイメージするには、「面のつながり」「方向性」「折り返し」など空間的処理が必要です。これは、家具の配置や地図の理解、日常動作における道具操作などに深く関わります。
◎ 構成能力のトレーニング
形の組み合わせを考え、構造を予測することで、構成失行のリハビリや作業療法的アプローチとしても有効です。
◎ 視覚的注意・分析力の促進
形状の違いを観察し、共通点・相違点を見つけて判断する中で、選択的注意や分析的思考能力が高まります。
◎ 問題解決・推理能力
立体化の仮説を立て、結果と照合する思考過程は、論理的思考や試行錯誤の習慣づけにつながります。
■ 活用方法と実践の工夫
◎ 基本的な進め方
- プリントをA4用紙に印刷します。
- 利用者に展開図と立体図形の対応関係を自由に考えてもらうように促します。
- それぞれのペアが分かったら、線を使って正しい組み合わせを結んでいく流れになります。
◎ 応用的な使い方
- まずは展開図を指差しで選んでもらうなど、認知負荷を減らすアプローチも可能です。
- STやOTの現場では、口頭で説明しながら答える/図形の特徴を言葉で整理するなど、言語的なアプローチを組み合わせることで、記憶や語想起の刺激にもなります。
- 自信のない方には、「この展開図はどの面が上になると思いますか?」「この面が前なら…?」などヒントやガイドを与えることで成功体験を引き出すことができます。
■ 対象者と使用シーン
- 高次脳機能障害(視空間失認・構成失行など)を持つ方への認知リハビリ
- 軽度認知障害や認知症予防を目的としたトレーニング
- 小学生〜高校生の図形的思考力・空間把握力の強化
- 通所リハビリやデイサービスでの脳トレ課題
- 在宅での自主トレーニング、家族とのレクリエーションツールとして
■ この課題の魅力とねらい
図形の展開図課題は、一見するとシンプルですが、実は高度な情報処理を必要とする「認知機能の複合課題」です。
- 折りたたんだ先を想像する力(視空間イメージ)
- 形の構成を頭の中で再構築する力
- 選択肢を見比べて正解を導く推理力と分析力
これらの能力は、日常生活の中でも「空間把握(車の運転や道順の記憶)」「組み立て(家具や道具の操作)」「図形的思考(地図や資料の読解)」などに深く関わっており、生活の質(QOL)を支える基礎的な力となっています。
また、本課題は間違ってもすぐにやり直せる形式であり、遊び感覚で楽しめる要素もあるため、モチベーションの維持やリハビリ継続にも効果的です。
■ 最後に
空間認知は加齢や脳損傷により低下しやすい機能ですが、適切な刺激を与えることで維持・改善が期待される領域でもあります。本プリントは、専門的な訓練が必要な方から日常的な脳トレを希望する方まで、幅広く利用できる無料教材として設計されています。
今後は、展開図の難易度を上げた応用問題や、図形の種類を増やしたバリエーションプリントも順次公開予定です。ぜひ日々のトレーニングにご活用ください。
このプリントはPDF形式で無料ダウンロードが可能です。印刷・コピー等も自由に行えます。教育現場や臨床場面での配布にもご利用いただけます。