このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。
目次
はじめに|半側空間無視におけるリハビリの重要性
高次脳機能障害の一症状としてよく見られる半側空間無視は、右脳損傷後に生じることが多く、左側への注意が低下し、周囲の空間を十分に認識できない状態を指します。この障害は、食事、整容、更衣、移動といった**日常生活動作(ADL)**に大きな影響を及ぼし、転倒や事故のリスクにもつながります。
今回紹介するプリントは、右から左への視線誘導を促す課題として設計されています。数字を順に追って線で結ぶことで、自然な視線移動を習慣化し、左側空間への注意喚起を強化する目的があります。
この素材は、リハビリ専門職が臨床現場で使用できるほか、在宅リハビリや自主トレーニングでも活用できるよう、シンプルかつ実用的なデザインに仕上げています。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|右から左への注意誘導を繰り返す訓練課題
■ プリントの構成
本プリントには、以下のような特徴があります
- 数字 4・5・7・8・6・2・1・3 が左右にランダムに配置
- ガイド線なし:自身の視線誘導と注意力を必要とする素材
- 右から左に向かって順番に線を引く動作が課題の中心
- ペンを使用できない場合は、指差しによる追従も可能
■ 目的
この課題は以下のリハビリ目的を想定しています
- 半側空間無視への介入
→ 数字を右から左に順に確認することで、左側空間への注意を強制的に促します。
- 視覚的注意の誘導と定着
→ 繰り返し練習により、左側への探索行動を習慣化させ、無視の改善を図ります。
- 視線移動と認知負荷のトレーニング
→ ガイド線がないため、数字位置を確認しながら線を結ぶことで、認知・空間認識機能を同時に刺激します。
- 在宅・臨床両用の利便性
→ 用紙1枚で取り組める簡易課題として、病院だけでなく家庭での自主練習にも適しています。
運動方法と活用方法|臨床・在宅の双方に対応
■ 基本的な実施手順
- A4サイズでプリントを印刷し、机上に置きます。
- 利用者に「右から左に向かって順に数字を探して線で結びましょう」と指示します。
- ペンを持てない場合は、指で数字を指差して順に追う方法でも実施可能です。
- 繰り返し実施し、視線が自然に左側へ移動できているかを確認します。
■ 臨床現場での活用例
- 回復期リハビリ病棟:OTやSTによる認知リハビリの一環として
- 訪問リハビリ:簡易的な注意誘導課題として自宅で実施
- デイケア・通所リハ:グループ訓練の中で個別対応課題として提供
■ 在宅リハビリでの工夫
- 家族や介助者が見守りながら、「数字を見つけられたら声をかける」など、注意喚起をサポート
- 日常生活と関連づけ、新聞やカレンダーの左側を読む練習と組み合わせることで汎化を促進
注意点と安全への配慮|過負荷を避けた指導が大切
■ 実施時の注意点
- 短時間・低負荷から開始
初回は1~2回程度、徐々に回数を増やします。
- 集中力の持続を確認
疲労や苛立ちが見られた場合は中止し、休息を挟みます。
- 誤学習を防ぐ
誤った順序で線を引いた場合は、その場でフィードバックを行い正しい探索方向を再確認します。
■ 安全面での配慮
- 視力低下や失認を伴う場合は、数字サイズを拡大したバージョンを使用すると有効です。
- 課題は机上安定座位で実施し、転倒リスクを伴う立位での訓練は避けましょう。
- 認知負荷が高すぎる場合は、ガイド線入りの初級版を併用して段階的に難易度を上げることが推奨されます。
まとめ|シンプルな数字課題で半側空間無視の改善をサポート
本プリントは、半側空間無視の改善を目的とした視線誘導課題として、臨床現場でも在宅でも活用できるシンプルで実用的なリハビリ素材です。
- 右から左への視線移動を繰り返す設計
- ガイド線なしで自主的な探索を促す
- ペンが使えなくても指差しで実施可能
この課題を通じて、視覚的注意の改善や左側空間への認識促進を図ることが期待できます。シンプルでありながら、半側空間無視リハビリの基本に忠実な教材として、現場や家庭でのトレーニングにご活用ください。