このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。
はじめに|時間認識は生活自立のカギ
時間を正しく把握することは、私たちが日常生活を円滑に送るために欠かせません。食事の時間、服薬のタイミング、通院や外出の予定など、時間感覚の喪失は生活の質に直結する課題です。
今回ご紹介するプリントは、アナログ時計の時刻を読み取り「〇時〇分」と記入する課題です。6つの異なる時刻(11時、5時、1時、2時、8時、4時)が描かれた時計イラストを用い、時針と分針を確認しながら正しく文字で記載します。
この課題は、高次脳機能障害(注意障害、記憶障害、遂行機能障害)を有する方や、軽度認知症、高齢者、発達期の子どもなど幅広い対象に使用できます。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|多角的な訓練効果
1. 視覚認知と注意力の向上
時計の針の位置を見て時刻を判断するには、形・位置・長さの微妙な違いを見分ける視覚認知力と、全体を丁寧に観察する注意力が必要です。針の読み取りは、一瞬の判断ではなく、意識的に視線を移動し確認する練習になります。
2. 時間概念と意味記憶の再構築
「短い針=時針」「長い針=分針」というルールを思い出し、数字と意味を関連付ける作業は意味記憶の活性化につながります。特に脳卒中や外傷性脳損傷後の方では、時間の読み取りルールを忘れるケースがあり、この課題は再学習のきっかけになります。
3. 遂行機能の強化
全ての時計を順番に処理し、漏れなく記入する作業は計画性・順序立て・持続的注意を必要とします。これは料理や外出準備など、日常生活のタスク管理能力に直結します。
4. 書字動作と手指巧緻性の促進
数字を正確に書く作業は、手指の巧緻性、書字速度、筆圧コントロールなど上肢機能のリハビリとしても有効です。
活用方法と進め方
1. 基本的な実施方法
- プリントをA4サイズで印刷。
- 鉛筆またはペンを準備し、静かな環境で開始。
- 時計を1つずつ見て「〇時〇分」と記載。
- 最後に全問を見直して誤記を修正。
2. 難易度調整の工夫
- 初級:時刻は「ちょうどの時間」のみ。例:11時00分。
- 中級:5分刻みで設定。例:11時25分。
- 上級:分単位でバラバラの時刻を設定し、読み取り精度を高める。
3. 応用的な使用例
- 針を消した時計を見せ、指示された時刻を描き入れる逆課題。
- 実際の時計を使い、その時刻を記入するリアルタイム練習。
- 他の課題(計算や文章問題)と組み合わせた複合トレーニング。
臨床現場での具体的な使い方
- 高次脳機能障害者の外来リハビリ
退院後の社会復帰支援として、自宅での自主トレ課題として配布。
- 通所リハビリ
午前の認知活動時間に集団で実施し、相互採点による交流促進。
- 発達支援
小学校低学年児童に時間の読み方を教える教材として活用。
- 高齢者施設
認知症予防プログラムの一環として週1回の時間認識訓練に組み込み。
評価の視点と記録方法
- 正答率
正しく記入できた時計の数。
- 所要時間
開始から終了までの時間を測定し、集中力や処理速度の変化を確認。
- エラー傾向
分針の読み違い、時針と分針の混同などを記録。
- 書字の状態
数字の形、読みやすさ、筆圧なども評価対象に。
記録を残すことで、経過観察や家族・本人へのフィードバックがしやすくなります。
注意点と安全への配慮
- 疲労や集中力低下が見られたら、無理せず中断する。
- 視覚障害がある場合は、針や数字を太くした拡大版を使用。
- 精神的ストレスを感じる方には「間違えても大丈夫」という声かけを行い、安心感を与える。
まとめ|時間感覚の回復は生活再建の第一歩
時計の時刻読み取りは、単なる学習ではなく、生活リズムの確立・社会参加の基盤作りにつながります。
正しく時間を理解することで、服薬、外出、家事、仕事といった日常の行動がスムーズになります。
このプリントはリハハウス公式サイトから無料ダウンロード可能で、印刷すればすぐに使えるため、臨床現場・在宅リハビリ・教育現場など、幅広い用途でご活用いただけます。