本プリントは、遂行機能(実行機能)に着目したリハビリテーション支援教材です。
指定された順番( 〇 → △ → □ → ✕ → 台形 )で記号をたどりながら線を引き、ゴールを目指す課題構成となっており、視覚的な探索、手順の保持、論理的思考、問題解決力を総合的に活性化させることができます。
遂行機能は、計画を立てる・順序立てて実行する・柔軟に対応する・目標を達成するといった、日常生活における「行動の司令塔」のような働きを担う重要な認知機能です。
■ プリントの基本構成とルール
このプリントは、以下のようなルールに基づいて作成されています。
ルール
- 用紙上に、〇・△・□・✕・台形など、複数の記号がランダムに配置されています。
- ユーザーは、あらかじめ決められた記号の順番(〇→△→□→✕→台形)を覚え、それに沿って線を引いていきます。
- 正しい順番で記号をたどっていくと、自然とゴール地点にたどり着く構造になっています。
- 順番を間違えると、線が途切れたり、行き止まりになったりして、目的地に到達できないようにしています
このシンプルなルールの中に、複数の認知機能がバランスよく組み込まれており、集中力を保ちつつトレーニングできる工夫が施されています。
■ このプリントで鍛えられる認知機能
本プリントは、以下のような遂行機能・認知機能のリハビリに効果が期待されます。
◎ 順序性・計画性
提示された記号の順番を記憶・理解し、その通りに行動を起こす能力が求められます。これは、日常生活において「段取りを考える」「優先順位をつける」力に直結します。
◎ 注意機能
多くの記号の中から正しい記号を探し出す作業により、選択的注意や視覚的探索能力が向上します。
◎ 作業記憶(ワーキングメモリ)
記号の順番を保持しながら動作を進めることが求められるため、短期的な情報保持と操作の同時処理能力が刺激されます。
◎ 問題解決能力・柔軟性
間違えたルートを選んだ際に、「なぜうまくいかないのか?」を考え直す過程が自己モニタリングや認知的柔軟性の訓練になります。
■ 活用方法と実践のコツ
- プリントをA4サイズで印刷し、鉛筆やペンで線を引きながら作業を進めます。
- 初めは口頭で記号の順番を一緒に確認し、視覚的にも分かるように記号表を提示しておくと安心して取り組めます。
- 慣れてきたら、記号表を非提示にして記憶に頼って行うことで難易度を調整できます。
- 失敗しても責めないことが大切です。「どこで間違えたか」を一緒に振り返ることで、認知の自己モニタリング能力が高まります。
- 集中力の持続が難しい方には、1回の課題量を減らしたり、大きめのフォント・記号サイズで印刷して視認性を高める工夫も有効です。
■ 対象となる方
- 高次脳機能障害(脳卒中後、外傷性脳損傷など)のある方
- 軽度認知障害や認知症予防目的の高齢者
- 発達障害や学習支援を必要とする児童
- デイサービス・通所リハビリ・訪問リハ・入院リハビリの現場で認知訓練として活用
- 在宅での脳トレや介護予防を希望するご家族の方々
■ 注意点と補足
- 1回のトレーニングは10〜15分程度を目安に行うと集中力が持続しやすく、疲労感を軽減できます。
- 実施中に混乱や焦燥が見られる場合は、課題量を減らす、またはステップアップ方式で提供するなど、個別対応が重要です。
- 本プリントを通して得られた反応や行動の特徴は、遂行機能の評価資料としても活用できます。
■ 最後に
遂行機能は、日常生活の中で意識されにくいものの、実は生活の質(QOL)を大きく左右する重要な認知機能です。
今回のプリントは、そんな遂行機能を楽しく・自然にトレーニングできるように設計された実践的なプリントです。
ゲーム感覚で取り組める要素もあり、「考えて動く」「間違いに気づく」「達成感を得る」という認知過程の流れを体験できる内容となっています。
今後は、記号の順番を変更したバリエーションや、迷路型・選択式の応用問題なども追加予定です。利用者の状態や目的に応じて、継続的なトレーニングにぜひご活用ください。