このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。
はじめに|大腿骨近位部骨折術後の「脱臼予防」に役立つリハビリ資料とは?
大腿骨近位部骨折に対する人工骨頭置換術(特に後方アプローチ)は、高齢者を中心に多く実施されている手術です。術後は再脱臼リスクが懸念されるため、患者の動作指導や生活環境の調整が不可欠です。
本記事では、リハハウスが提供する【無料ダウンロード可能なイラスト付きプリント】を用いて、術後の排泄動作(トイレ動作)における脱臼肢位の注意点を視覚的に分かりやすく伝える方法をご紹介します。特にリハビリ専門職や病棟スタッフ、訪問リハビリ従事者にとって、患者指導や家族説明に活用できる実践的な内容となっています。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|脱臼を防ぐための姿勢・環境指導を“見える化”するプリント
本プリントの目的は、後方アプローチ後における脱臼リスクの高い肢位(とくにトイレ動作時)を、イラストと解説で“見える化”することです。内容は以下の4つの観点で構成されています。
1. 和式トイレの使用リスク
和式トイレでは、深くしゃがみこむ動作を伴うため、股関節の屈曲・内転・内旋の3動作が同時に発生します。これは後方アプローチ術後に最も危険な脱臼肢位にあたります。
【注意】
術後の一定期間は、和式トイレの使用は避けるよう指導しましょう。
2. 洋式トイレの安全性と補高の重要性
洋式トイレは、股関節の屈曲角度を最小限に抑えた姿勢で排泄が可能なため、術後の脱臼予防に有効です。さらに、便座が低すぎる場合には「補高便座」の使用が推奨されます。
【推奨】
ポータブルトイレや補高便座(5〜10cm)を活用して、安全な姿勢を維持しましょう。
3. 便座の高さと姿勢指導
便座が低いと、股関節が深く屈曲し、脱臼リスクが高まります。以下のような高さ調整を推奨します。
- 理想の座面高:40〜45cm以上(個人差あり)
- 理想の姿勢:膝より少し高い座面で、股関節と膝の角度が90度以上になるよう調整
また、便座に座る際には、足を揃えてゆっくりと浅く座ることが大切です。
4. 補助器具の活用と転倒予防
補高便座の中には、肘掛け付き・滑り止め付きのタイプもあり、立ち座り時の支援と転倒予防に役立ちます。また、足が浮く場合には「足台(フットレスト)」を併用することで安定性が増します。
活用方法|リハビリ場面やご家族指導にそのまま使える実用ツール
このプリントは、以下のような場面での活用を想定しています。
- 入院中の患者指導資料として
病棟内での排泄動作指導時に、視覚的に説明できるツールとして使用。
- 退院指導や在宅復帰支援として
ご家族への説明や在宅環境の調整に役立つ情報共有ツールとして活用。
- 多職種連携ツールとして
看護師・介護職・セラピスト間での指導方針共有にも効果的。
プリントには【イラスト付きのNG例/OK例】【補高便座の使用例】【便座高さの目安】など、具体的かつ直感的に理解できる要素を盛り込んでおり、医療従事者がそのまま臨床で活用できる構成になっています。
注意点と安全への配慮|患者に合わせた個別対応と観察が大前提
本プリントを活用するにあたり、以下の点にご留意ください。
- 状態に応じた判断が必須
術後経過や可動域制限には個人差があるため、医師の指示やセラピストの評価に基づいた対応が基本です。
- 過信は禁物
プリントはあくまで補助ツールであり、実際の動作指導やリスク判断は専門職による臨床的観察が前提となります。
- 補助具の使用には練習が必要
補高便座などを導入する際は、事前にリハビリ場面での練習や調整が重要です。
- 転倒予防を第一に
安定した座位確保、手すり設置、滑り止めマットなど環境整備も同時に行いましょう。
まとめ|日常の動作にこそ“予防”の視点を。リスクを減らす一枚のプリント
大腿骨近位部骨折における後方アプローチ術後は、ちょっとした動作が脱臼に繋がるリスクをはらんでいます。
その中でも、トイレ動作は頻度が高く、環境条件や姿勢に細心の注意が求められる場面です。
リハハウスが提供する本プリントは、視覚的なイラスト解説と、具体的な生活指導のポイントを融合した、実践に強い資料です。
ぜひ臨床現場や患者指導、在宅支援にご活用いただき、脱臼予防の一助としてお役立てください。