【無料イラスト付き】大腿骨近位部骨折〈後方アプローチ〉術後の脱臼肢位|床の座り方①

術後に危険な「床での座り方」とは?

大腿骨近位部骨折の手術後、とくに後方アプローチで人工骨頭置換術や骨接合術を受けた方は、特定の姿勢に注意が必要です。

その中でも、和室や畳のある家庭でよく行われる「床座り」は、脱臼リスクが高まる代表的な動作のひとつです。

この記事では、脱臼しやすい床座りのパターンと、安全な座り方を無料のイラスト付き資料とあわせて解説します。

 

なぜ床座りが脱臼リスクになるのか?

後方アプローチでは、股関節の後方組織(外旋筋群や関節包)が切開されるため、「深い股関節屈曲」「内旋」「内転」といった動作の組み合わせを避ける必要があります。

しかし、床に座る姿勢には以下のような問題があります。

 

  • 股関節が90度以上に屈曲する姿勢
     
  • 片足を内側にたたむ姿勢( 横座り・正座崩し )
     

こうした姿勢は、股関節を脱臼しやすい危険な肢位に導いてしまうため、術後初期には特に注意が必要です。

 

❌ 脱臼しやすい床座りの例

以下のような座り方は、脱臼リスクが高いため術後は避けましょう

 

  • 横座り(足を一方向に流す)
     
  • 正座の崩れた姿勢(左右非対称の体重支持)
     
  • 膝を抱え込むような座り方
     
  • 足を内側にたたむ座り方
     

これらの姿勢では、股関節が強く屈曲し、内旋や内転も同時に起こるため、後方脱臼のリスクが非常に高くなります

また、床からの立ち上がりも片足を後ろに引きがちになり、脱臼肢位に入りやすいことも要注意です。

 

脱臼しにくい床座りの方法とポイント

和室や床生活のある家庭では、床座りを完全に避けることが難しい場面もあります。

その場合は、下記のポイントを意識して安全な床座りを行うことが重要です。

安全な床座りの工夫

 

  • あぐらをかく
     
  • 正座の姿勢(膝関節の疼痛がない場合)
     
  • 背中を壁やクッションに預け、腰を深く曲げないようにする
     
  • 高さのあるクッションや低い座椅子を併用して、股関節の屈曲角度を減らす
     

このような座り方では、股関節の負担を最小限に抑えることができ、脱臼のリスクを大幅に軽減できます。

 

環境を整えることでリスクを減らす

床生活の家庭では、以下のような環境調整が効果的です。
 

  • 座椅子を使い、直接床に座らない工夫
     
  • 立ち上がりを補助する手すりや壁の配置
     
  • マットや滑り止めを使ってバランスを取りやすくする
     

また、どうしても床に座る必要がある場面では、できるだけ介助者がそばで見守ることも安心につながります。

 

ご家族・介助者へのアドバイス

患者さんご本人が「いつも通りの生活をしたい」と思う気持ちは自然ですが、脱臼は一瞬の姿勢の崩れで起こり得る重大な合併症です。

そのため、環境の調整や安全な姿勢の理解を、ご家族や介助者が支えることが重要です。

指導の際は、実際のイラストを見せながら「どの姿勢が危険なのか」「どうすれば安全か」を具体的に伝えることが効果的です。

 

まとめ

床座りは日本の生活に根付いた文化であり、完全に禁止するのは現実的ではありません。

しかし、脱臼肢位を避ける工夫をすることで、安全に日常生活を送ることは十分に可能です。

本記事では、脱臼しやすい床座り・安全な床座りの違いを明確にイラスト付きで提示しました。

これらの内容は、患者指導・退院前教育・家族説明にそのまま活用できる教材としてもおすすめです。

 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次