股関節脱臼を防ぐ!床の物を拾うときの安全な座り方とは?
大腿骨近位部骨折の手術を受けた方、とくに後方アプローチで手術をされた場合、日常の何気ない動作が「脱臼リスク」につながる可能性があります。
とくに盲点となりやすいのが、「床の物を拾う動作」です。
本記事では、脱臼しやすい拾い方と安全に床の物を拾う方法をお伝えします。
術後の生活を安全に送るために、ぜひ参考にしてください。
後方アプローチ術後に注意すべき動作とは?
後方アプローチでは、股関節の後方を切開して手術を行うため、術後は以下の動きに要注意です。
- 股関節の深い屈曲
- 内転(足を内側に寄せる動き)
- 内旋(つま先が内側を向く動き)
この3つの動作が組み合わさると、股関節脱臼のリスクが高まります。そのため、物を拾う際も体の使い方を工夫する必要があります。
【NG】術側の足を曲げて拾う座り方
床に落ちた物を拾うときに、手術した側の股関節を深く曲げてしゃがみ込む動作は、非常に危険です。
たとえば、次のような動作は避けるべきです
- 手術した足を前に出して深くしゃがむ
- 腰を大きく前に曲げて拾おうとする
- 足をクロスさせるようにしゃがみ込む
これらの動作は、屈曲+内転+内旋が同時に起きやすく、脱臼肢位に該当します。術後は特にリスクが高いため、絶対に避けるべきです。
【OK】手術していない足を曲げて拾う方法
推奨される方法は、手術していない足(健側)を曲げ、手術した足(患側)は伸ばしたままで腰を落とす方法です。
具体的には以下のような動作になります
- 片膝立ちの姿勢をとる
→ 健側(手術していない方)の股/膝関節を曲げ、床に術測の膝をつくか近づける
- 患側の足は後ろに伸ばすように置く
→ これにより股関節の屈曲を最小限に抑えられます
- 両手を使って安定姿勢をとり、物を拾う
→ 手すりや近くの家具があれば支えるとさらに安全です
このような姿勢であれば、股関節を危険な角度に曲げることなく、安全に物を拾うことができます。
実際の声:「無意識にやっていた」
多くの患者さんが「何気なく拾おうとしてしまう」と話します。とくに高齢の方は、膝をつく動作に慣れていないため、つい術側の足を曲げてしまいがちです。
そこで重要なのが、具体的な動作指導と反復練習です。イラストや動画での説明も有効です。
ご家族・介助者への指導ポイント
- 床の物を拾う際は極力、介助者やご家族がサポートする
- 手術した足を前に出して深く曲げないよう声かけをする
- 自宅でよく落とす物は取りやすい位置に配置する(例:リモコン、携帯電話)
また、ピックアップツール(リーチャー)などの福祉用具も活用すれば、無理な姿勢を取らずに済みます。
まとめ
後方アプローチ術後は、何気ない動作が脱臼につながる危険があります。
特に床の物を拾う動作では、手術した足を曲げる姿勢は避け、健側の足を曲げて腰を落とすことが大切です。
正しい動作を知って実践することで、脱臼リスクを大幅に下げることができます。
患者本人だけでなく、家族や介助者も正しい方法を共有し、安全な在宅生活を支えましょう。