このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。
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はじめに
半側空間無視は、脳血管障害や外傷性脳損傷などの後遺症として頻繁に認められる高次脳機能障害の一つです。この症状では、身体や空間の片側(多くは左側)に対して注意を向けることが難しくなり、見落としや動作の偏りが生じます。たとえば、左側の食事を残す、左側の袖を通し忘れる、または書字や描画が紙の右側に偏るといった行動が観察されます。
そのため、「左側空間への注意を促す訓練」や「視覚探索範囲の拡大」がリハビリテーションにおいて極めて重要です。
今回紹介する【無料ダウンロード】プリントは、数字とその読み(ひらがな)を線で結ぶ課題です。右側に数字(例:1、2、3)、左側に対応する読み(例:いち、に、さん)が配置されており、対象者は対応するペアを線で結んでいきます。右から左へ線を引く動作によって、左空間への注意を促し、視覚探索のバランス改善を目指すリハビリ教材です。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|「対応づけ」と「探索」を通じて左側への注意を高める
■ 課題の概要
本課題は、右側の列に数字、左側の列に対応する日本語の読みが書かれたシンプルな構成となっています。対象者は、右から左へ線を引きながら、「どの数字がどの読みと一致するか」を探し、線でつなぐ作業を行います。
この課題では単に数字を読んだり線を引いたりするだけでなく、視覚的注意・言語理解・対応づけ能力を同時に刺激します。さらに、右から左への線引き動作を繰り返すことで、半側空間無視で見落としがちな左側空間へ自然に注意を誘導します。
■ 本プリントの目的
- 左側空間への注意喚起
右側にある刺激から左側の対応項目を探して線を引くことで、左空間の認識を促します。
この動作は、「右優位な視覚探索」から「両側に広がる探索」への変化をサポートします。
- 視覚探索のバランス改善
線を引く際に視線が自然と左方向へ移動するため、眼球運動の訓練にもなります。
結果として、視覚探索範囲を広げる効果が期待できます。
- 注意と遂行力の向上
数字と読みの対応を正確に結ぶには、注意の持続と照合の正確さが求められます。
そのため、選択的注意・集中力・遂行機能のトレーニングにもつながります。
- 言語機能の活性化
数字と読みをマッチングさせる過程で、数の概念理解や語彙想起も刺激されます。
言語的要素を含む点が、本課題の特徴の一つです。
- 手指運動の促通
線を描くことで、上肢の巧緻動作を自然に練習することができます。
特に書字練習が難しい方にとっても、簡便な導入課題となります。
運動方法と活用方法|臨床・在宅どちらでも実施できる課題構成
■ 基本的な実施手順
- 姿勢の準備
机の中央にプリントを置き、体が用紙の正面を向くように座ります。
特に左側を無視しやすい方は、体幹の正中を紙の中央に合わせるように意識づけを行います。
- 課題の提示方法
「右側の数字と左側の読みを線で結びましょう」と説明します。
指差しを交えながら、まず1〜2問を一緒に行い、動作の理解を確認します。
- 実施フェーズ
– ペンまたは鉛筆を使って、右から左へ線を引いていきます。
– 途中で迷った場合は、一度右側へ戻らず、できる限り左方向を探索するよう促します。
– 一度に全問を行うのではなく、2〜3問ずつ進める方法も効果的です。
- 答え合わせ
作業終了後、数字と読みが正しく対応しているか確認します。
成功体験を重視し、正解を見つけられた部分をしっかりと評価します。
■ 臨床現場での応用
- 作業療法(OT)での使用
半側空間無視へのアプローチとして、机上課題の導入や注意喚起トレーニングに最適です。
また、視線の動きや身体の向きの変化を観察し、改善度を定量的に評価する指標としても有用です。
- 言語聴覚療法(ST)での活用
数字と読みの対応を言語的に確認しながら行うことで、語彙想起・音読練習・数概念理解にもつなげることができます。
- 理学療法(PT)との併用
座位保持訓練や体幹バランス訓練の中に取り入れることで、認知・注意課題と姿勢制御課題の組み合わせが可能になります。
■ 在宅での自主トレーニング
本プリントは、家庭でも簡単に実施できる形式です。
ペンが持ちにくい場合には、指で線をなぞるだけでも効果があります。
家族がサポートする場合は、次のような声かけが効果的です。
- 「左の方にも何かあるかな?」
- 「右の数字に合う言葉を探してみよう」
- 「線を少しゆっくり引いてみようか」
声かけは焦らせず、穏やかに誘導することが大切です。また、難易度を調整するために、問題数を減らしたり、文字サイズを大きく印刷したりすることも可能です。
注意点と安全への配慮|指導・自主練習時の留意点
- 無理な持続を避ける
集中力が低下した状態で続けると、正答率が下がり達成感が得られません。5〜10分程度を目安に行いましょう。
- 左側の見落としに気づかせる工夫
間違いを指摘するよりも、「左側にもあるね」「全部見えてるかな?」と気づきを促すような言葉がけを行います。
- 筆圧と姿勢に注意
力を入れすぎず、線が滑らかに引けるようにサポートします。
右肩が上がる、体幹が右に傾く場合は、姿勢調整を優先します。
- 心理的負担を減らす
失敗を責めるのではなく、できた部分を肯定的に評価することが重要です。
- 視力・眼鏡の使用確認
視覚情報処理の負担を軽減するため、必要に応じて眼鏡を着用させ、十分な照度下で実施します。
まとめ|線を結ぶ動作で左空間への気づきを促す
この【無料ダウンロード】半側空間無視リハビリプリントは、右から左へ線を引く「線結び課題」を通して、自然に左空間への注意を促すことを目的としています。
- 数字と言葉を対応づけて線で結ぶシンプルな構成
- 左空間への探索を自然に誘導
- 注意力・視覚探索力・遂行機能を包括的に刺激
- 臨床でも在宅でも活用可能
継続して行うことで、視覚探索の改善や左側空間への気づきの増加が期待されます。
シンプルながらも高いリハビリ効果を持つ教材として、臨床現場・自主トレーニングの両方でぜひご活用ください。

