【無料ダウンロード】記憶リハビリイラストプリント|ないもの探しで記憶力を鍛える自主トレ教材 その②

 

このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。

 

 こんな素材がほしい! もっとこんな素材を増やしてほしいなどがありましたら、リクエストしてください!

 

目次

はじめに

高次脳機能障害や軽度認知障害(MCI)、脳卒中後の患者さんでは、記憶障害や注意機能の低下が日常生活に大きく影響します。「さっき見たものを思い出せない」「物の場所を忘れてしまう」「必要な情報だけにうまく注意を向けられない」といった訴えは、臨床の現場でもよく耳にするところだと思います。

こうした症状に対するリハビリテーションでは、

  • 視覚情報を一度取り込む
  • 必要な情報を保持する
  • その後、変化や欠損に気づく
    といった一連の認知処理をトレーニングできる課題が有用です。

今回リハハウスで提供する【無料ダウンロード】イラストプリントは、紙面上の複数のイラストのうち「どれが消えたのか」を探すないもの探し形式の記憶課題 その② です。

  • 紙の上半分:基準となるイラストが複数個並んでいる
  • 紙の下半分:そのうち1つだけを消して、残りをランダムに再配置している

という構成になっており、「上と下を見比べて、どのイラストが消えているかを見つける」ことが課題となります。視覚的な楽しさを保ちつつ、記憶・注意・視覚探索を同時に刺激できるプリントですので、臨床の個別訓練から在宅の自主トレーニングまで幅広く活用いただけます。

※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。


内容と目的|「ないもの探し」で記憶と注意を同時に鍛える

■ 課題の概要

このプリントは、いわゆる「間違い探し」とは少し異なり、“1つだけ消えたイラスト” を探す記憶課題です。

  • 紙の上半分:複数のイラストが一定の並びで配置
  • 紙の下半分:上のイラスト群から1つだけを除外し、残りをランダムに配置

対象者は、まず上半分のイラスト群を覚えることに集中します。その後、下半分のイラストを見ながら、「上にはあったのに、下では見当たらないイラストはどれか?」を探し出します。

単に「違い」を見つけるのではなく、一度見た内容をいったん頭の中に保持し、その後の情報と比較して欠落を捉えるプロセスが求められる点が、本課題の特徴です。


■ リハビリでの主な目的

  1. 視覚性短期記憶のトレーニング
    上部のイラストを一度見て覚え、その後に比較する必要があるため、視覚性短期記憶を直接的に刺激します。
     
  2. 選択的注意・持続的注意の向上
    多数のイラストの中から「消えた1つ」を見つけるためには、視覚探索の際の選択的注意と、課題に向き合い続ける持続的注意が重要となります。
     
  3. 視覚探索能力の改善
    上と下を行き来しながら、複数の情報を照合していくため、視線の動きや探索範囲を自然に広げる訓練になります。
     
  4. 認知的柔軟性・比較判断の訓練
    「ある/ない」を判断する比較処理が発生するため、情報の照合・変更に気づく力を鍛えることができます。
     
  5. 遂行機能の補助的トレーニング
    「上を覚える → 下と比べる → 答えを決める」という一連の流れを自分で進めていくことで、手順の理解・実行という遂行機能にも軽く働きかけることができます。

運動方法と活用方法|臨床・在宅それぞれでの実践イメージ

■ 基本的な実施手順

  1. 課題の説明
    最初に、対象者へ次のように説明します。
    「上にいくつか絵が並んでいます。この絵をよく覚えてください。そのあと、下の絵と見比べて、上にはあったのに下にはない絵を1つ探しましょう。」
     
  2. 観察・記銘フェーズ(上半分のイラストを見る)
    – 30〜60秒程度、上半分のみを集中して見てもらいます。
    – 必要に応じて、「個数」「特徴(色・形)」などを口頭で整理してもらうと、記銘過程の補助になります。
     
  3. 比較・探索フェーズ(下半分との照合)
    – 次に、上と下を見比べながら「消えた1つ」を探してもらいます。
    – 指でなぞしながら1つずつ確認していく方法も有効です。
     
  4. 解答の確認
    見つけたイラストを指さし、口頭もしくは書字で答えてもらいます。
    「〇〇のイラストが消えています」など、言語表出も組み合わせることでより多面的な訓練になります。

■ 臨床現場での活用方法

  • 作業療法(OT)場面での活用
    机上での注意・記憶トレーニングとして導入しやすい課題です。
    視線の動き、探索のパターン、見落としの傾向などを観察することで、注意・視空間機能の評価にもつなげられます。
     
  • 言語聴覚療法(ST)との併用
    見つけたイラストを「名前で言う」「どこにあったか説明する」など、言語課題と組み合わせることで、記憶+言語表出の訓練として発展させることができます。
     
  • 理学療法(PT)との組み合わせ
    座位バランス訓練中に机上課題として取り入れれば、姿勢保持と認知課題の同時負荷が可能です。
    半側空間無視を伴う症例では、紙の配置やイラストの位置を工夫することで、左側への視覚探索を促すような応用も考えられます。

■ 在宅での自主トレーニングとして

家庭でも印刷さえできれば簡単に使用できる構成です。
ご家族や介護者がそばにつき、次のような声かけを行うと、より効果的に取り組めます。

  • 「上の絵をよく見てみようか」
  • 「覚えられたかな?今度は下の絵と比べてみよう」
  • 「上にあったけど、下に見当たらない絵はどれかな?」

難易度調整のポイントとしては、

  • イラストの数を増減させる
  • 類似した形・色のイラストを増やす/減らす
  • 並べ方を規則的→ランダムへと変えていく

といった工夫が挙げられます。初期は「明らかに特徴の異なるイラスト」から始め、慣れてきたらバリエーションを増やすと飽きにくく、継続しやすいです。


注意点と安全への配慮|指導・自主練習時の留意点

  1. 認知疲労に配慮する
    記憶・注意機能を同時に使う課題のため、短時間でも疲労感が出やすい場合があります。
    1回あたり5〜10分程度を目安にし、疲れが見られたら無理をせず中断します。
     
  2. 「できなかった」感を残さない声かけ
    見つけられない場合も、「もう一度一緒に見てみましょう」「ここまではよく覚えられていましたね」といった肯定的なフィードバックを重視します。
     
  3. 視覚機能への配慮
    視力低下や視野障害がある場合は、イラストを大きめに印刷する・コントラストを強めるなどの工夫が望まれます。
     
  4. 難易度が高すぎないよう調整する
    最初からイラスト数が多すぎると、記憶困難だけでなくモチベーション低下にもつながります。
    対象者の負担感に応じて段階的に難易度を設定しましょう。
     
  5. 安全な環境での実施
    座位バランスが不安定な方の場合は、椅子の高さや背もたれ、足台などを調整し、安全に課題へ集中できる環境を整えることが重要です。

まとめ|「ないもの探し」で楽しく記憶と注意をトレーニング

この【無料ダウンロード】リハビリ用イラストプリントは、

  • 上下のイラストの違いから「消えた1つ」を探す
  • 視覚性短期記憶・注意・視覚探索を同時に刺激できる
  • 臨床・在宅の双方で利用しやすい構成

という特徴を持ったないもの探し形式の記憶課題プリントです。単なるゲーム的な課題ではなく、

  • 見る
  • 覚える
  • 比べる
  • 気づく

という一連の認知プロセスを丁寧にトレーニングできる点が、リハビリ専門職にとっても扱いやすいポイントです。継続的に取り組むことで、「なんとなく見ている」から「意識して覚える・探す」への変化を促し、日常生活での注意・記憶の質の向上にも寄与することが期待されます。

臨床での個別訓練、通所リハでのグループ活動、在宅での自主トレーニングなど、さまざまな場面でぜひご活用ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次