このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。
はじめに|大きさの違う数字で注意力に挑戦するTMTプリント
高次脳機能障害を有する方において、注意障害は特に日常生活動作(ADL)や社会生活に大きく影響を与える認知障害のひとつです。中でも「視覚的注意の低下」や「選択的注意の困難」は、周囲の情報を適切に処理し行動に移すことを妨げる要因となります。
本記事で紹介するのは、Trail Making Test(TMT)形式を応用した無料プリントです。今回は、数字の大きさに変化を持たせた「①~⑮」の数字を一筆書きで結んでいく課題です。
視覚探索の際に「数字の位置」だけでなく「数字のサイズの違い」にも注意を払う必要があるため、視空間認知と注意分配機能の同時訓練が可能となります。施設内のリハビリや在宅トレーニングに最適な形式であり、印刷してすぐに使える点も大きな特長です。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|視覚探索と注意力の同時トレーニングを目指して
このプリントの構成と狙い
本プリントでは、①〜⑮までの数字が大小異なるフォントサイズで散在しており、被験者は「数字の順番」と「視覚的注意」を頼りに、それらを順につないでいきます。
- 課題形式
①~⑮の番号を一筆書きで線でつなぐ
- 難易度調整
数字のフォントサイズをランダム化することで、注意の選択と分配を同時に求められる素材
- 対象者
注意障害、高次脳機能障害、軽度認知障害などを呈する方
- 目的
- 視覚的注意の向上
- 視線探索範囲の拡大
- 数字の選択に対する反応時間の短縮
- 遂行力と作業記憶の活性化
想定される効果
- 数字を順に探すことで視野の広がりを促進
- 大小の数字を区別することで選択的注意を強化
- 一筆書きによる持続的注意の維持
- 成功体験による自己効力感の向上と動機づけ
このプリントは、注意力の多側面に働きかけることで、機能回復のみならず生活動作への汎化も期待できます。
運動方法と活用方法|現場でも在宅でも使える実践的なTMT課題
実施の基本手順
- A4サイズでプリントを印刷
- 利用者の正面に配置し、「①から⑮まで、数字の大きさに惑わされず順番に線でつなぎましょう」と説明
- ペンを紙から離さずに一筆書きでつなげるよう促す
- 完了後は、線の軌跡を評価しながら、どのように視線が動いたかをフィードバック
活用場面と工夫例
- 病院・施設
リハビリテーション室で集中力訓練として
- 訪問リハビリ
限られたスペースでも実施可能
- デイケア・通所リハ
レクリエーション的要素を取り入れた軽課題として
- 家庭内訓練
家族が付き添いながら短時間でも実施できる
難易度調整のポイント
- 実施回数や制限時間を設けてスピード訓練
- 次回プリントで数字数を「⑳」まで増やすなどの段階的進化
- 数字の色を変える、迷路風に配置するなど視覚的変化の追加
注意点と安全への配慮|過負荷を避けながら集中力を引き出す工夫
実施時の注意点
- 時間は10〜15分程度を目安に
長時間の取り組みは集中力低下や疲労の原因になります。
- 視線や姿勢の偏りを確認
特に半側空間無視を伴う方では、数字の配置バランスや視線誘導に注意が必要です。
- 失敗を責めず成功体験を重視
間違いよりも、最後まで取り組めたこと自体を評価します。
- 筆記が困難な場合の代替手段
指なぞりや支援者による誘導補助でも効果があります。
安全配慮のポイント
- ペンを持つ動作で疲労や痛みが出る場合は、事前に確認し中止基準を設定
- 視力や眼鏡使用状況に配慮し、文字サイズや配置を調整
- 課題後は、認知疲労に配慮した休息時間を確保する
まとめ
TMT形式の一筆書き課題は、リハビリ現場でも汎用性が高く、専門職が指導しやすい構造を備えています。今回の【①~⑮・大きさ違い】プリントでは、サイズ差による視覚的刺激を活用することで、より選択的な注意機能へのアプローチが可能になります。
この素材は、次のような方におすすめです
- 注意障害を呈しており、TMT課題に慣れてきた方
- 数字探索の精度をさらに高めたい対象者
- 集中力を短時間で高めたいと考える利用者やご家族
今後も【その②】【その③】と段階的に難易度を調整したTMTシリーズを展開予定です。ぜひ臨床や在宅でのリハビリ、自主トレ指導にお役立てください。