このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。
はじめに|注意障害のアプローチに迷ったらTMTプリントを
高次脳機能障害のなかでも「注意障害」は、日常生活や社会活動への影響が大きく、リハビリテーションにおいて重要な介入対象となります。対象者は、視覚的な刺激に対する反応が鈍くなったり、注意の持続が困難になったりする傾向があります。
こうした課題に対応するために、視覚探索・持続的注意・選択的注意といった機能を包括的にトレーニングできる教材が求められています。
今回ご紹介する「【無料ダウンロード】高次脳機能障害・注意障害に使えるTMTプリント(①~⑮)その⑥」は、視覚的な探索力を促し、注意力や遂行機能の向上を目指すためのプリント教材です。PT・OT・STなどの専門職による訓練のみならず、自宅での自主トレーニングにもご活用いただけます。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|TMT課題を活用して視覚的注意と遂行力を鍛える
課題の概要
「TMT(Trail Making Test)」形式の課題は、元々神経心理学的な評価法として広く用いられていますが、現在では訓練ツールとしても評価が高まっています。
本プリント「その⑥」では、①から⑮までの番号を、一筆書きで順番につなぐという形式を採用しています。
- 課題構造:①~⑮までの番号を順に線で結ぶ
- ルール:ペンを紙から離さず、連続して結ぶ(視覚探索と遂行力の両方を刺激)
- 図形配置:前回に比べ、視線の飛躍や交差が増加
- 対象者:注意障害・遂行機能障害のある方
視線移動の範囲や注意の転換が求められる設計にすることで、単純な追従作業ではなく、より認知的負荷の高い訓練内容となっています。
目的と期待されるリハビリ効果
- 視覚探索力の向上
広範囲に分布した番号を探すことで、視野全体を使った探索を促します。
- 注意の持続力強化
最後まで番号を追うための集中力が求められ、持続的注意力の強化につながります。
- 遂行機能と柔軟性の訓練
一筆書きでつなぐという制約の中で、計画立案・修正能力が刺激されます。
- モチベーションの向上
課題を達成することによる達成感が、継続的なトレーニング意欲につながります。
運動方法と活用方法|現場と家庭での実践ポイント
実施手順
- A4サイズでプリントを印刷(白黒印刷でも問題ありません)
- 利用者の正面に配置し、「①~⑮まで順番につなぎましょう」と説明
- ペンを紙から離さずに記入してもらう(難しい場合は指なぞりから開始)
- ミスや迷いがあった際は、その場で修正しながら進めてもらう
活用シーンの例
- 急性期リハビリテーション病棟
ベッドサイドでの簡便な認知機能訓練
- 回復期・生活期の通所リハ
繰り返し実施しやすい形式での反復訓練
- 訪問リハビリテーション
自宅環境でも負荷を調整しながら実施可能
- 家族支援としての自主トレ
在宅介護者が簡単に取り組ませやすい素材
応用的な使い方
- 難易度調整版のプリントと組み合わせて段階的アプローチ
- タイマーを使って集中力の維持や処理速度の評価にも応用可能
- 終了後の振り返りタイムで、「どこで難しかったか」「楽しかった点」などを共有しフィードバックに
注意点と安全への配慮|個々に合わせた適切な実施が大切
実施時の注意点
- 1回10〜15分以内で完了できるようにし、集中力が切れない範囲で設定します。
- 課題中に疲労やストレスが見られた場合は、中断や調整を行いましょう。
- 手指の操作が難しい場合は、ペンではなく指なぞりで代用するなどの工夫を行います。
介助者・家族への助言
- 達成した箇所だけでなく、途中経過も観察し、取り組み姿勢を評価することが重要です。
- 完遂できなかった場合も、成功した部分をポジティブに伝えることで、モチベーションの維持が図れます。
- プリントへの記録(例:日付、結果、本人のコメントなど)を継続することで、リハビリの推移や効果の振り返りにも有効です。
まとめ|TMTプリントを活用した注意障害へのアプローチ
「【無料ダウンロード】高次脳機能障害・注意障害に使えるTMTプリント(①~⑮)その⑥」は、注意障害の評価・訓練に活用できるシンプルかつ効果的なプリント課題です。
- 視覚的注意・持続的注意・遂行機能を一体的にトレーニング可能
- 一筆書き形式でワーキングメモリや順序性も刺激
- 臨床現場・在宅リハ・学習支援に幅広く対応
- 専門職から家族まで、誰でも使いやすい構成
今後も、難易度や課題形式を段階的に変化させたシリーズを公開してまいります。ぜひ、対象者の状態に合わせて、TMTプリントを活用してみてください。