はじめに
脳卒中や高次脳機能障害、加齢による認知機能の低下などでは、計算力・注意機能・遂行機能のいずれか、または複数の機能が低下することがあります。これらの機能低下は、買い物や金銭管理、服薬スケジュールの理解など、日常生活の自立に大きく影響します。
今回紹介する【無料ダウンロード】プリントは、シンプルな数字の合計を求める計算課題 その③ です。
1枚のプリント内に、4つの大きな四角(□)があり、それぞれの中に1桁の数字が4つランダムに配置されています。対象者は、その数字をすべて足し合わせ、合計を記入します。
この課題は一見簡単に見えますが、注意力・短期記憶・作業記憶・遂行機能を同時に刺激できる内容となっています。臨床現場でのリハビリ指導や、家庭での自主トレーニング教材としても活用できる汎用性の高いプリントです。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|シンプルな計算課題で注意と遂行機能を刺激
■ 課題の概要
このプリントは、4つの問題で構成されています。
それぞれの問題では、大きな□の中に1桁の数字(例:3、6、2、8 など)がランダムに配置されており、それらの数字をすべて合計して答えを書くというものです。
数字は一定の配置パターンを持たず、上下左右・斜め方向に位置しているため、単純な加算に加えて「どの数字をすでに足したか」「見落としがないか」という注意の持続と空間的認識も求められます。
■ リハビリの目的
- 注意機能(Sustained Attention)の向上
数字を一つずつ丁寧に確認し、見落としなく合計を求める過程で注意力が鍛えられます。視覚的注意の集中と切り替え能力を同時に刺激します。 - 遂行機能(Executive Function)の強化
「足す順番を決める」「結果を確認する」などの手順を自分で立てる必要があり、計画性・順序立て・自己修正力といった遂行機能が自然に鍛えられます。 - ワーキングメモリ(作業記憶)の訓練
複数の数字を一時的に保持しながら合計を求めるため、短期的な情報保持能力を高める訓練になります。 - 情報処理速度の改善
繰り返し行うことで、数値を読み取り、合計を求める速度と正確性の両方を改善できます。 - 視空間認知力の向上
ランダム配置の数字を視覚的に把握し、順序立てて処理する過程で、空間的注意と目の動きのコントロールを促します。
運動方法と活用方法|実践的な指導と在宅利用の工夫
■ 基本的な実施手順
- 課題の提示
対象者にプリントを提示し、「それぞれの四角の中にある4つの数字を足して、合計を書きましょう」と説明します。
理解が難しい場合は、1問を一緒に例題として解き、手順を明確にします。 - 実施フェーズ
各問題を順に解いていきます。
初めのうちはゆっくり確認しながら行い、慣れてきたらタイマーを使って時間を測定することで、注意の持続とスピードの両面を評価・訓練できます。 - 答え合わせと振り返り
答えが合っているかを確認し、間違えた場合は「どの数字を見落としたか」「順番を間違えたか」などをフィードバックします。
この振り返り作業が遂行機能の改善につながります。
■ 臨床現場での活用方法
- 作業療法(OT)での利用
注意・遂行・計算といった複数の要素を同時に評価できる教材として有用です。
また、筆記速度や数字の記入位置から、手指巧緻性や空間バランス感覚の観察にも活用できます。 - 言語聴覚療法(ST)での活用
言語性記憶・数的処理能力の確認に適しています。数字を声に出して足しながら行うことで、音韻処理と注意維持を同時に訓練できます。 - 難易度の調整
初級:数字を3つに減らして実施。
中級:数字を4つに固定(本プリントの形式)。
上級:5~6個の数字を使用し、制限時間内に回答する形式。
段階的に難易度を変化させることで、対象者の認知レベルに合わせたトレーニングが可能です。
■ 在宅での自主トレーニング方法
このプリントは、家庭でも簡単に取り組める内容です。
筆記が難しい方は、家族が代筆するか、口頭で答えても構いません。
家族が「次の四角い枠は全部でいくつかな?」と声をかけながら進めることで、コミュニケーションの一環としても楽しく実施できます。
また、繰り返し行うことで、集中持続時間の変化や処理のスピード向上を確認できます。
- 在宅活用のコツ
- 1日1〜2枚を目安に取り組む。
- 朝やリハビリ前など、集中しやすい時間に実施。
- 同じ課題を一定期間ごとに再実施し、成果を記録する。
このように家庭環境でも安全に継続できる構成になっています。
注意点と安全への配慮|指導・自主練習時の留意点
- 疲労・集中力の低下に注意
認知課題は思っている以上にエネルギーを消費します。
5〜10分程度を目安に実施し、疲労や注意散漫が見られた場合はすぐに休憩を取ります。 - 姿勢と環境の調整
机と椅子の高さを適切に設定し、手元が見やすい照明環境で実施してください。
身体の傾きや利き手の使用制限がある場合は、位置を調整して作業しやすくします。 - 誤答を指摘しすぎない
間違いがあっても、否定的な言葉は避け、「ここまでよくできましたね」「次はもう少し丁寧にやってみましょう」といった肯定的なフィードバックを行います。 - 安全配慮
疲労や視覚的負荷により頭痛・めまいなどが出る場合は中止します。
また、視力低下や失認がある場合には、数字の大きさやコントラストを調整して使用しましょう。
まとめ|シンプルな構成で認知機能を多面的に刺激する教材
この【無料ダウンロード】計算リハビリプリントは、注意機能・遂行機能・ワーキングメモリ・空間認知を同時に鍛えることができる実践的教材です。
- 数字を足すシンプルな課題で、誰でも取り組みやすい
- 臨床現場でも在宅でも使用可能
- 繰り返しの実施で認知持続力と処理速度を改善
このプリントを継続して使用することで、集中力・思考スピード・日常生活での判断力の向上が期待されます。
ぜひ、リハビリ現場や自主トレーニングの一環としてご活用ください。

