このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。
目次
はじめに|TMTプリントで注意機能の評価と訓練を両立
高次脳機能障害や注意障害を抱える方に対するリハビリテーションでは、視覚的注意、選択的注意、作業記憶、情報処理速度など、複数の認知機能を統合的に評価・訓練するアプローチが求められます。
今回、リハハウスが提供する「TMTプリント(Trail Making Test)スタンダード版」は、数字(①〜⑩)とひらがな(あ〜こ)を交互に線で結んでいく形式の注意課題プリントです。視覚探索とともに順序記憶や切り替え能力を必要とする構成となっており、臨床評価にも、自主トレーニングにも対応可能な素材です。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|視覚探索と切り替え能力の向上をねらうプリント構成
【課題構造の詳細】
- 対象プリント名
TMT(Trail Making Test)【スタンダード】
- 表示要素
数字①~⑩およびひらがな「あ〜こ」が混在してランダムに配置
- 課題ルール
- 例)① → あ → ② → い → ③ → う……と、数字とひらがなを交互に順番通り結ぶ
- 一筆書きでペンを紙から離さずに記入
- 視覚的・認知的負荷
- 順番の把握(数列・五十音順)
- カテゴリの切り替え(数字 ⇄ ひらがな)
- 視覚探索の持続と集中
- 情報処理速度と作業記憶
この構成により、単なる注意喚起ではなく、「認知の柔軟性」や「反応の切り替え能力」といった高次脳機能の中核部分に刺激を与えることができます。
運動方法と活用方法|TMTスタンダードの現場での活かし方
【基本的な活用方法】
- プリントをA4サイズで印刷し、対象者の正面に配置します。
- 「数字とひらがなを交互に結んでいく」というルールを口頭で明確に伝えます。
- ペンを持つのが困難な方には、指でなぞる、目線で追うといった代替方法も選択肢となります。
- 途中で困難があった場合は、視覚的なヒント(例:最初の数個だけ番号に色をつけるなど)を提示しながら難易度を調整してください。
【臨床・在宅での使用シーン】
- 回復期リハビリ病棟での認知訓練プログラム
- 通所リハ・訪問リハビリにおける認知機能フォローアップ
- 自主トレ支援プリントとして家族が活用
- 作業療法(OT)・言語療法(ST)・理学療法(PT)での認知アプローチの一環
【段階的な使用法】
- 「スタンダード」課題が定着したら、次のステップとして【大きさの違い】【数字の回転】【交差線あり】などの応用プリントへの展開も可能です。
注意点と安全への配慮|成功体験を引き出すために
【実施時のポイント】
- 初回は指差しや視線誘導でサポートしながら実施し、課題の全体像を把握させることが大切です。
- 課題の途中で中断してもよい雰囲気づくりを行い、焦りや失敗体験を軽減します。
- 「できた」「つながった」という体験の積み重ねが、意欲の向上と自信の再構築につながります。
【安全配慮】
- 無理に早さを求めず、個々のペースに合わせて丁寧に実施
- 疲労や混乱が強い場合には、回数を制限する・1日1課題のみ行うなど、負担の少ない方法を選択する。
- プリントを保存し、取り組み状況の可視化を行うことで、リハビリの成果が本人にも伝わりやすくなります。
まとめ|TMTプリントを活用して注意・認知機能を高める
TMT(Trail Making Test)は、評価にも訓練にも応用できる汎用性の高い認知課題です。本プリントは、数字とひらがなという二つのカテゴリを交互に処理する構成により、注意の転換能力や認知的柔軟性を実践的に鍛えることが可能です。
この【スタンダード】バージョンは、初学者から中等度の認知障害を持つ方まで広く対応できる構成となっており、以下のようなケースにおすすめです。
- 注意障害のある利用者に視覚的・認知的な刺激を与えたいとき
- ご家族による自主トレーニング用の素材を探しているとき
- 認知機能の経過を可視化しやすい訓練素材を求めているとき
今後も段階別に難易度を調整したTMTプリントを提供予定です。リハビリの現場やご家庭での認知機能トレーニングに、ぜひご活用ください。