このプリントは医療従事者の監修のもと作成されたもので、あくまで自主トレーニングの補助資料です。無理のない範囲で行い、症状や痛みがある場合は医療機関に相談しましょう。
はじめに|股関節外転運動とは?
股関節の外転運動は、中殿筋や小殿筋といった外側の筋群を活性化させる重要な運動です。特に、歩行時の骨盤の安定性に大きく関与しており、歩容の改善、転倒予防、姿勢保持能力の向上に貢献するため、リハビリテーションの現場では頻繁に取り入れられています。
本ページでは、側臥位で実施する股関節外転運動のイラスト素材を無料で提供し、自主トレーニングや在宅指導に役立つプリント資料としてご活用いただける構成となっています。リハビリ専門職の皆様が、指導場面で即座に活用できる内容となるよう、運動の目的や方法、留意点を丁寧に解説します。
※本プリントは医療行為を目的としたものではありません。使用に際しては、体調や症状に応じて無理のない範囲で行ってください。
内容と目的|中殿筋・小殿筋を効果的に鍛える
実施内容
本素材に含まれる運動内容は以下の通りです。
- 側臥位での股関節外転運動
- 中殿筋・小殿筋に対する収縮刺激
- 運動方向を意識した正確な運動パターンの学習
筋力強化の目的と意義
股関節外転筋群のなかでも特に中殿筋と小殿筋は、立位時や歩行時に骨盤の傾きを制御するための中枢的役割を担っています。これらの筋肉が弱化すると、歩行時に骨盤が左右に揺れる「トレンデレンブルグ徴候」や、立脚期での姿勢不安定が顕著になります。
したがって、側臥位での股関節外転運動は以下のような目的で活用できます。
- 歩行の安定性向上
- 骨盤の左右バランス調整
- 立位時の重心コントロール機能の改善
- 転倒予防プログラムの一環としての活用
また、股関節周囲の筋肉を個別に意識して収縮させる練習としても有用であり、術後リハビリや片麻痺症例にも適応可能です。
運動方法と活用方法|正確な姿勢と運動方向の習得
実施方法の詳細
- 側臥位をとる
- 安定した床やベッドの上で横向きに寝る
- 下側の脚は軽く曲げ、身体を支えるための土台を作る
- 上側の脚を伸ばす
- 膝関節は伸展位(まっすぐに伸ばした状態)を保つ
- つま先は正面、またはやや下向きにして股関節の外旋を抑える
- 斜め後方に上げる
- 運動方向は真横よりもやや後方を意識
- 中殿筋だけでなく、小殿筋や大腿筋膜張筋も適度に活性化される
- ゆっくりと上下動を繰り返す
- 反動を使わず、筋収縮を感じながら行うことが重要
- 呼吸を止めず、自然に呼吸を行いながら反復
活用場面
- 訪問リハビリテーションでの自主トレーニング指導
- 整形疾患や脳血管障害後の立位安定性向上目的のトレーニング
- フレイル・サルコペニア予防を目的とした在宅支援
- 歩行分析結果に基づくリハ介入での個別アプローチ
イラストプリントを活用することで、言語指導だけでは難しい運動方向や姿勢の理解が深まり、セルフエクササイズの精度も高まります。
注意点と安全への配慮|誤った代償動作に注意
施行時の注意点
- 膝関節の屈曲に注意
膝が曲がると、股関節ではなく膝主導の動作になり、ターゲットとする筋肉への負荷が低下します。必ず膝関節は伸展位を保ちましょう。
- 骨盤の回旋を避ける
骨盤が後方へ倒れてしまうと、外転運動ではなく股関節伸展の運動になってしまいます。身体の軸を安定させるために、体幹の固定と骨盤の中立位の維持が重要です。
- 反動や勢いを使わない
筋トレとしての効果を得るためには、ゆっくりとした動作で筋収縮を意識することが求められます。反動やスイングの動きは効果を低下させるだけでなく、腰部への負担にもつながります。
- 疼痛がある場合は中止
痛みがある際は無理に継続せず、主治医や担当療法士と相談のうえ対応してください。
まとめ|安全かつ効果的な股関節外転トレーニングの実践を
股関節外転運動(側臥位)は、中殿筋・小殿筋といった骨盤安定に関与する重要な筋群を強化するうえで有効なトレーニングです。歩行の質を向上させたい方、立位バランスに課題がある方、術後の筋力低下予防を目的とした方など、幅広い対象に活用できます。
本素材は、視覚的に理解しやすいイラスト付きプリントとなっており、リハビリ専門職の指導補助として、また患者自身のセルフトレーニングガイドとして有用です。
安全性に配慮しながら、丁寧に筋収縮を感じることで、効果的な筋力強化を促進することができます。ぜひ日々の指導や自主トレ支援にご活用ください。